米労働コスト、7-9月は予想上回る伸び-新たなインフレリスク
(ブルームバーグ): 米国では7-9月(第3四半期)、労働コストが市場予想を上回る伸びとなった。また4-6月(第2四半期)の労働コストは従来値から大きく上方修正された。インフレ圧力の強まりにつながるリスクがある。
発表元の米労働統計局は、今回の統計算出では過去5年の修正済みデータが取り入れられたと説明。今回の修正は、ここ数四半期における賃金の伸びが従来想定よりずっと大きかったことを示しており、個人消費が力強いペースで経済をけん引できた理由を浮き彫りにしている。
7-9月のインフレ調整後の時間当たり報酬は前期比年率3%上昇に加速。報酬の上昇ペースがインフレを上回ったのはこれで7四半期連続となった。
今回の統計は、一貫して賃金の伸び鈍化を示している他のデータとは対照的だ。多くの指標が経済の強さを示唆する中で発表された今回のデータはインフレのリスクを映し出しており、米連邦公開市場委員会(FOMC)は今後数カ月の利下げに関して慎重な姿勢を維持する可能性がある。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、エステル・オウ、クリス・コリンズ両氏は「7-9月の労働生産性が予想を下回ったことと、4-6月の単位労働コストの上方修正は、FOMCの利下げがより漸進的なものになることを裏付けているとみられる。特に単位労働コストの上方修正は金融当局者を慎重な姿勢にさせるだろう」と分析した。
またドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲くことも、金融政策の道筋に影響を与える可能性がある。トランプ氏の政策はインフレ加速につながると、多くのエコノミストが指摘している。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏はリポートで、「特に新政権への移行に伴う経済成長見通しの上振れリスクを考慮した場合、FOMCは政策緩和においてより慎重な対応が必要になるとみられる」と記した。
前年同期比では、第3四半期の労働生産性指数は2%上昇と、ここ1年余りで最も低い伸び。単位労働コストは3.4%上昇と、2022年10-12月(第4四半期)以来の大きな伸びとなった。