落成を祝いテープカットする（右から）石川さん、親松さん、用地寄贈者の川口広光さん

　神奈川県藤沢市の彫刻家親松英治さん（90）が島原・天草一揆（島原の乱、1637～38年）の犠牲者の鎮魂を目的に40年間かけて制作した聖マリア観音像のホール落成式が16日、長崎県南島原市南有馬町の現地であった。乱の主戦場だった原城跡を見下ろす高台に鎮座するマリア像は高さ9・65メートル、木彫り像としては世界最大級という。市民有志でつくる一般社団法人「南島原世界遺産市民の会」が譲り受けた。17日から有料公開した。 【写真・動画】島原・天草一揆で一揆軍の猛攻にも耐えた「マッチョな城」島原城 　式には行政関係者ら約85人が参加。主催者あいさつで、市民の会の石川嘉則代表理事（85）が「5月に（日本のカトリック教会最高位で、新上五島町出身の被爆2世である）前田万葉枢機卿がお見えになり『宗教の垣根を越えた新たな祈りの場ができましたね』と言われた。皆さん、世界最大級の（木彫りの）マリア像が南島原市南有馬町にあることを機会あるごとにお知らせください」と呼びかけた。 　親松さんは「島原半島の活性化のため、多くの巡礼者や観光客を引き付けるフランスのルルドの聖母のような存在になってほしい」と語った。 　像の受け入れを巡っては曲折があった。2015年、親松さんからの無償譲渡の申し出に対し、市は「像は地域活性化に貢献する」として移設費などを予算化した。だが一部の市民から「政教分離に反する」との声が上がると一転して撤回。商工関係者が中心となり20年3月、実現に向けて市民の会を結成し、移設と覆屋（おおいや）（ホール）建設のため1億円を目標に寄付金集めに乗り出した。 　集まった額は現在、約6300万円。市が不足分を補う形で隣接地に公衆トイレを約2500万円かけて整備し、この日の落成式にこぎ着けた。会は募金活動を続けるほか、入館料（一般500円、高校生300円、小中学生200円）をホールの運営に充てる。 　開館時間は午前10時～午後4時。木曜定休。聖マリア観音ホール＝0957（61）0977。　（本山友彦）