935hPa→990hPa…ネットがざわついた「屋久島が台風弱めた」説の真偽は? 改めて気象庁に聞いてみた
夏休み最終盤に日本各地に被害をもたらした台風10号。鹿児島県薩摩川内市上陸の前後を境に勢力が弱まったことで、交流サイト(SNS)では屋久島の注目度が高まった。「台風の目が高山によって崩された」などとする説が投稿されたからだ。「洋上アルプス」とも称される島の力が、本当に影響していたのか? 【写真】〈関連〉高峰が連なり、「洋上アルプス」と称される屋久島
気象庁データによると、屋久島に最接近した8月28日は、中心気圧935ヘクトパスカルで非常に強い勢力だった。翌29日中には990ヘクトパスカルになり、9月1日には熱帯低気圧に変わった。屋久島には九州最高峰1936メートルの宮之浦岳をはじめ、1000メートル級の山が連なる。台風がたどったコースと衰退のタイミングはかみ合っていた。 同庁のアジア太平洋気象防災センターは「屋久島の影響は限定的」と説明。「台風の北西に乾燥域があり、乾いた空気が流れ込んだ。雲が水蒸気に変わったことで、勢力が急速に衰えたとみている」と分析する。 同センターによると、そもそも台風の大きさは直径300~500キロ、高さも十数キロに及ぶ。幅が30キロに満たず、高さ2000メートルに届かない屋久島が、台風に影響を与える可能性は少ない。 ただ、自然の地形が台風の勢力をそぐこともあるという。その例が台湾だ。屋久島の70倍の面積があり約4000メートルの高峰がそびえる。台湾を通過して中国大陸に抜ける際、勢力を弱めるケースが見られるらしい。
今回の台風10号により、屋久島では推定樹齢3000年の「弥生杉」(高さ約26メートル、幹回り約8メートル)が折れる被害が確認された。観光地の「白谷雲水峡」にあり、歩道が整備され、登山初心者にも親しまれた巨木だった。屋久島森林管理署は9月中にも県や町、観光協会などと検討会を立ち上げ、残った根元の部分などを保存するどうかを協議していくという。
南日本新聞 | 鹿児島