「政治とカネ」候補なぜ推薦 見返り不十分で共倒れ 衆院千葉3区に見た苦心の公明党事情
先の衆院選で公明党の退潮傾向が鮮明になった。石井啓一代表が落選するなど議席を公示前の32から24に減らし、比例代表の得票数も100万票以上減らした。連立を組む自民党派閥のパーティー収入不記載事件の非公認候補らの大半に推薦を出したことが響いている。なぜ推薦を出したのか。千葉3区で薄氷の勝利を収めた自民党の松野博一前官房長官に推薦が決まるまでの舞台裏を探った。 【写真】「もっと下に…下に」“半ケツ”状態でビラ配りをするボランティア女性 不記載事件で自民党から処分を受けた松野氏に対し、公明党が推薦を出したのは公示直前の10月14日だった。同党千葉県本部の平木大作代表は「3区から推薦を出してほしいという声があるかどうか、最後まで見極めていた」と振り返る。 公示前、3区の党員からは「松野さんに推薦を出さないでほしい」との声が強かった。自民党公認とはいえ、不記載事件で比例重複が認められず、背水の陣で臨んだ松野氏は、旧安倍派の事務総長を務めるなど旧安倍派「5人衆」の一人。「クリーンな政治」を金看板としてきた公明党にとって「松野氏推薦」は自己否定につながり、批判を浴びかねない禁じ手だ。 一方、平成11年に自民党と連立を組んで4半世紀。野党時代を含めて数々の苦難を乗り越えるなど、風雪に耐えてきた絆は深化している。「下駄(げた)の雪」と揶揄(やゆ)されながらも、ときには自民党の政権運営に歯止めをかける「ブレーキ役」を自任してきただけに、推薦の是非は悩ましい選択だった。 平木氏によると、松野氏に推薦を出すかの判断基準は、パーティー券販売のノルマ超過分の還流資金の使途や不記載の詳細な説明に加え、支持者への謝罪がなされているかだったという。 松野氏は、少なくとも3区内の千葉市緑区と千葉県市原市でそれぞれ集会を開き、一連の経緯を説明し、謝罪したという。「(会場では)厳しい質問が出たが、松野氏は真摯(しんし)に答えてくれた。還流資金について、おかしな使い方をしていないことや、党改革への取り組みも聞くうちに支持者は理解したようだ」(平木氏)。最終的に松野氏推薦に理解を示す雰囲気が強まったという。 10月27日の審判の日。接戦を制した松野氏は選挙事務所で勝因について問われ、記者団に「公明党からも推薦をいただき、大きな弾みになった」と安堵(あんど)した表情で語った。