光照射で細胞を好きな場所に接着し、免疫によるがん攻撃を観察 阪大など
がん細胞と免疫細胞を並べて観察して治療効果を把握
第2世代のPEG脂質を用いると、いつもは血管内などで浮遊している細胞を光を照射した場所にくっつけることができる。 がん細胞の不均一性を調べるため、免疫を担うナチュラルキラー(NK)細胞とがん細胞をアレイの上にひとつずつ並べて相互作用を観察すると、NK細胞ががん細胞を殺す過程や、殺さなくても一部を取り込む過程を確かめることができた。がん治療の高度化への寄与が期待される。
細胞解析のプラットフォームをつくりたい
医療のほかにも、昆虫の嗅覚受容体細胞を任意の配置で着脱できれば、特定の匂いに対する高感度センサーをつくることなどもできる。山口教授は「特定の分野に限らず、細胞の表現型を見る必要がある研究、細胞に何らかの操作を加えて、一部を回収するという必要がある研究や産業に資するプラットフォーム技術にしたい」と意気込む。
情報産業では巨大IT企業5社からなる「GAFAM(ガーファム)」がプラットフォーマーとして注目を集めるが、1細胞解析技術も生物研究を支えるプラットフォーマーとして今後に期待したいと思う。 (長崎緑子/サイエンスポータル編集部)
◇4月8日追記 本文の一部を訂正しました。 4段落目) 誤「山口教授は2000年ごろから光を使った基板で1細胞解析ができないか模索。」 正「山口教授は2005年ごろから光を使った基板で1細胞解析ができないか模索。」 5段落目) 誤「2015年ごろからは後輩の京都大学生命科学研究科の山平真也特定講師らと、PEG脂質の脂質部分を2つに改変した。」 正「2015年ごろからは教え子の京都大学生命科学研究科の山平真也特定講師らと、PEG脂質の脂質部分を2つに改変した。」 4つめの図版のキャプション) 誤「緑色に光るナチュラルキラー(NK)細胞が隣にあるがん細胞を殺す過程(赤枠)や、殺さなくても一部を取り込む過程(青枠)が観察できた」 正「緑色に光るがん細胞を隣にあるナチュラルキラー(NK)細胞が殺す過程(赤枠)や、殺さなくても一部を取り込む過程(青枠)が観察できた」