数字と人情に弱い社長が会社をダメにする 『御社の寿命』著者インタビュー
変化を恐れない企業という共通点
── 長く続く企業の特徴について教えてください 老舗企業というのは100年以上続く企業をイメージしているが、長く続く企業を分析すると大きく二つ特徴がある。一つは、老舗は一つのものを長らく持ち続ける印象があるが、100年続く企業は非常に外部環境の変化に対応しているということだ。 具体的には、創業200年の日本酒メーカーに「なぜ長く続くのか? 200年も味を守り続けるのは大変じゃないですか」と質問した。その社長はこう答えた。「何を言っているのか? 味を守ってたら、うちの会社なんかすぐに倒産してますよ」と。どういうことかというと、当然、日本酒の嗜好は年々変わっていく。たとえば淡麗辛口が好きだとかドライ感とか変化があるが、その酒蔵は毎年毎年その変化をしっかりマーケティングする。 「その変化に対してちゃんとリスクをとって味を変えていく。だからうちは200年持つのですよ。味を変えなかった酒蔵はまったく市場にでないではないか」と。変化を恐れない、変化に対して前向きに対応するという共通点がある。
長く続く企業に社是と番頭あり
あと1点、長くというのは、代変わりがうまくいくかということ。100年続く企業は、だいたい社長の就任期間は平均24年。ということは、4代変わらないといけない。4人の事業承継、社長の交代がうまくバトンタッチできないと、100年続かない。経営トップを4代続いて成功させるノウハウがあるということが分かっている。 そのなかで、なぜ4人も続けて、うまく社長の交代ができるかというと、びっくりするかもしれないが、100年以上続いている会社の8割に社訓とか家訓、社是というのがある。2代先、3代先、4代先の社長に創業当時の思いを伝えるということは、当然、生きていないので、形に残しておかないといけない。それも、しかも確実に語り継がれて行かなければならないという意味では、社訓や社是は必要。そういう意味では8割、9割がしっかりとした社訓社是をもっているというのは、驚きであり、合理的だと思う。 あと一つが、当然、4代も続くと、なかには経営がうまくいかなかったり、もしくは体が病気がち、なかには向いてない社長もでてくるが、それでも続けられるのは、いわゆる「番頭さん」という社長を補佐する役割、こういう機能が長く続く企業には存在している。長く続く会社には一つの秘密や条件がある。