夕日が照らす参道の先に 福岡市西区・太郎丸神社にある「落ちない鈴」
「九大合格」「全員合格」――。小さな白い石に願い事を書いて奉納できるようにし、絵馬を掛ける場所を境内に設けた。SNSで発信したところ、話題が徐々に広がり、受験生やその家族が参拝にやって来るようになった。
ある日、モニュメントのそばで氏子の一人が驚きの声を上げた。「鈴の穴から九大が見えるばい」。田園が周囲に広がる神社から、九大伊都キャンパスまでは2キロほど。「狙ったわけではなく、たまたま見えたのです」と神社総代長の冨永豊さん(69)は話す。「神様の配慮というのか、なにか因縁のようなものを感じますね」
受験シーズンが近づいてくると、受験生や保護者が「落ちない鈴」を目指して全国から訪ねてくるように。春には、お礼参りで足を運ぶ学生の姿も見られるそうだ。
静かに向き合う夕景
太陽が西に傾き、参道の鳥居の影が長く伸びる時間になった。太郎丸神社で”光の道”が見られるようになったのは2021年からだという。参道と太陽を遮るように立っていた松の木が伐採され、夕日が差す参道の美しさに気づく人が出てきた。 「夕暮れどきには、スマートフォンを手にした若い人も訪れているようです」と冨永さん。「落ちない鈴」ほどではないものの、夕景に興味をもつ人も少しずつ増えているようだ。
”本家”の宮地嶽神社に比べると、かなり控え目な「光の道」ではある。訪れた時期がやや早かったせいか人影は少なく、小さな神社の参道をやさしく照らす夕日に静かな心で向き合うことができた。冨永さんによると、太郎丸神社の夕景は10月末頃まで楽しめるそうだ。
読売新聞