日本企業のAIドリブン経営を促進する――、テラデータが2025年の国内事業戦略を公開
データ分析関連の製品やサービスを提供する米Teradataの日本法人、日本テラデータ株式会社は、12月11日に記者説明会を開催した。同社の翌12日のイベント「AI Innovation Day 2024 Tokyo」に先だっての開催となった。 【画像】日本テラデータ株式会社の前代表取締役社長の髙橋倫二氏 記者説明会では、2025年度の事業戦略が語られた。また、今月に米国における、あるいは10月に米国で開催されたTeradataの年次イベント「Teradata Possible 2024」における、AI関連の発表について、日本でも発表・説明した。 この記者説明会は、10月20日に新しく日本テラデータ株式会社の代表取締役社長に就任した大澤毅氏と、前代表取締役社長の髙橋倫二氏が、メディアに向けてあいさつする場ともなった。 ■ AI時代で新しい社長にバトンタッチ 髙橋氏は2017年に社長就任して以来を振り返った。2017年にはTeradataはハードウェアの会社のイメージだったが、現在ではソフトウェアの比率が大きくなり100%サブスクリプションになった。ハードウェアも買い切りではなくレンタルになり、こうしたサブスクリプションによって経営の安定につながったと、氏は語った。 もう1つの流れはクラウドであり、さらにはクラウドとオンプレミスのハイブリッドも注目されるようになっている。これについて髙橋氏は、Teradataはクラウドでもオンプレミスでも分析できるのが強みだと語った。 さらに現在は、AIで新しい時代に突入しているとして、「新しい社長にバトンタッチして、新しいテラデータをリードしてほしい」と髙橋氏はあいさつした。 新社長の大澤氏は、日本テラデータの社長に就任した理由を3つ挙げた。 1つめは、これまでヒト・モノ・カネが企業の競争力の源泉と言われてきたが、特にAIの登場により、データが競争力の源泉になりうると考えたことだという。 2つめは、テラデータの顧客やパートナーには日本を代表する企業が集まっており、それらの企業といっしょにデータを通して日本企業を変革していけると考えたと、大澤氏は述べた。 3つめは、日本テラデータは外資系企業だが、日本単独でいろいろなことに取り組め、日本発で世界に出ていけると大澤氏は語った。 ■ 2025年の戦略「日本企業のAIドリブン経営を促進し、明日の常識をつくる」 続いて大澤氏は、2025年以降の事業の柱として、「AIドリブンによる日本事業戦略」を語った。 AI以前から企業のデータ活用への期待は高いが、成果を実感できているわけではない企業が多い、と大澤氏は言う。そこで日本テラデータの2025年の戦略として、「日本企業のAIドリブン経営を促進し、明日の常識をつくる」を氏は掲げた。「各業界のAIドリブンを牽引いただくキャプテン、一番星を20社、2025年に確立する」(大澤氏)という。 これを実現するための5つの柱も大澤氏は語った。 1つめは「次世代マルチモーダルAI」。テキスト、映像、画像、音声データを1つのベクトルデータとして扱えるようにしたことで、AI/MLの対象としてまとめて処理できる。 2つめは「AIプリセットモデル」。さまざまなモデルをかけあわせて企業の必要なAIを作るのはハードルが高いため、ユースケースごとにテンプレートとしてプレ実装して展開するという。 3つめは「データ+AI戦略アドバイザリ」。データ&AI環境構築を、テラデータのコンサルタントが支援する。 4つめは「高性能ハイブリッドデータプラットフォーム」。Teradataの得意とする、クラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド環境において、さまざまなデータを統合してAIに供給する。 5つめは「データガバナンスの最適化とAPIモダナイズ連携」。Teradata Data DNAサービスでデータガバナンスを実現する。また、新たにFinancial Grade API Gateway機能をデータプラットフォーム「Teradata Vantage」に組み込んだことで、メインフレームのデータも企業のデータ活用に活用できるようにした。 これらの内容を「Teradata Vantage AIオファリング」ソリューションとして、日本発で日本の企業に届ける、と大澤氏は語った。 従来通りのTeradataのコアの部分をベースに、その上に次世代マルチモーダルAIや、AIプリセットモデル、データ+AI戦略アドバイザリによる企業ごとのカスタマイズやチューニング、APIモダナイズ連携が乗り、AIを実装するためのエンジンを提供するというものだ。 ■ BYO-LLMや、Amazon Bedrockとの連携など、最新の発表を紹介 Teradataソリューションのアップデートについては、日本テラデータ株式会社 執行役員 テクノロジーセールス事業部 事業部長の小永井崇氏が説明した。 製品戦略として、「Trusted AI」「Enterprise Price Performance」「Open and Connected」の3つを挙げ、それぞれに関する最近の新発表を小永井氏が紹介した。 Trusted AIの分野では、まず「BYO-LLM」が12月に発表された。「Bring-Your-Own LLM」という名のとおり、LLMをはじめとするさまざまなAIモデルをTeradata Vantageに取り込んで、データをTeradataから移動することなくインデータベースで利用できる。AWSではすでに一般提供を開始、2025年上半期にAzureとGoogle Cloudで一般提供開始予定。 また、さまざまなAI基盤モデルを利用できる「Amazon Bedrock」との連携も12月に発表された。Amazon BedrockのAI基盤モデルをTeradata Vantageから利用できる。Pythonライブラリ「teradatagenai」から呼び出せる。2025年第2四半期に利用可能になる予定。 NVIDDIAとの協業も、Teradata Possibleで発表された。Teradata VantageでNVIDIAのGPUクラスタを利用できるほか、生成AIモデル開発の「NVIDIA NeMo」と生成AIマイクロサービス「NVIDIA NIM」をTeradata Vantageに統合する。GPUクラスタはTeradata VantageCloud Lake on AWSですでに利用可能で、AzureとGoogle Cloudでは2025年前半に利用可能になる予定。 「AI Unlimited」は、2023年に発表されたオンデマンドのAI/MLエンジン。1時間数ドルから利用可能。AWSとAzureのマーケットプレイスでパブリックプレビューを提供開始しており、Microsoft Fabricでも11月からパブリックプレビューとして提供開始している。 「NotebooksとModelOpsのConsole連携」は、データサイエンテスト向けの機能で、Jupyter Notebook環境やTeradataのModelOpsをTeradata Vantabe Consoleに統合する。2025年前半を予定。 Enterprise Price Performance(エンタープライズレベルのプライスパフォーマンス)の分野では、アプライアンスサーバー製品のIntelliFlexで、クラウドとオンプレミスにて、最新のDatabase Engine 20.0の対応を進め、2025年第2四半期を目指して開発している。 そのほか2025年に予定している新機能としては、Vantage databaseの中でベクトルデータを扱う「Enterprise Vector Store」や、作成した特徴量を複数のパイプラインで再利用して特徴量エンジニアリングを効率化する「Enterprise Feature Store」がある。両者とも2025年第1四半期にプライベートプレビュー開始予定。 新しいオファリング「AIオンプレミス」も開発中。クラウドに出したくないという要件について、自社環境内でAIワークロードを実現するオンプレミス製品群だ。2025年第1四半期に「AI Workbench」としてソフトウェア製品を開発、2025年前半にGPU搭載のハードウェアアプライアンスのリリースを検討しているという。 Open and Connected分野では、まず、オープンなテーブルフォーマットのサポートとして、Apache IcebergとDelta Lakeのフォーマットへの対応と、Open Catalogへの対応を実装。さらに、Apache IcebergとDelta Lakeをまたぐクロスリードやクロスリードにも対応し、ハイブリッド分析ができる。 また、モダンなデータスタックとの連携にも2024年から力を入れているという。直近ではデータエンジニアに人気のあるdbt Cloudとの連携や、データ統合で使われるAirbyteやApache Airflowへの対応もリリースしている。 データサイエンスのワークベンチでは、オープンソースのKNIMEツールとの連携もリリースして、ローコード/ノーコードでAIパイプラインを構築できるという。 Anaconda協業としては、2024年2月からAnacondaのプロフェッショナルライセンスをTeradata Vantageに同梱している。 小永井氏は、「Teradataは閉じられた独自の環境のイメージが強いと思うが、2025年以降もOpen and Connectedを戦略的な柱として強化を図る」と語った。 ■ BYO-LLMをデモ 小永井氏が紹介した新発表のうち、「BYO-LLM」については、日本テラデータ株式会社 テクノロジーセールス事業部 DXソリューション部 部長の八田秦史氏がデモした。 BYO-LLMにより、Teradata VantageでさまざまなAIモデルを使って分析を実行するメリットとしては、データを動かすのではなく、モデルのほうを動かすことがある。大量のデーを移動する場合には、長い時間がかかり、分析側でデータを加工する非効率もあるという。それに対してデータのあるところで分析を動かすことにより、高速に分析できると八田氏は説明した。 BYO-LLM機能の使い方としては、Hugging Faceなどで公開されているAIモデルをダウンロードし、OAF(Open Analytics Framework)のコンテナにインストールし、Teradata Vantageのコンテナ上でAIを動かす。今回のNVIDIAとの提携によりGPUクラスタも利用できる。さらに、分析だけでなく業務アプリケーションにのせることもできるという。 デモでは、Jupyter Labからデータベースにログインし、Hugging FaceからLLMモデルをダウンロードしてOAFにインストール。そのLLMモデルを使って日本語を英語に翻訳するPythonプログラムを実行して、データベーステーブル上のテキストを翻訳したり、入力されたテキストを翻訳したりするところを見せた。
クラウド Watch,高橋 正和