「ビャンビャン麺」だけに使われる激ムズ漢字 なぜ誕生? 新聞紙面で使うことになったら
竈(かま)、禰(ね)、靡(なび)く、矜羯羅(こんがら)がっちゃう!……などなど。アニメ「鬼滅の刃」や、人気アーティストAdo、Snow Manの楽曲などで難しい漢字を見かけることが増えました。そんな難漢字の中でも「ビャン」は、過去にも話題になっている激ムズ漢字です。画数はなんと57で、ふだんは常用漢字を使う新聞にも登場したことがあります。こんな「超レア漢字」を一体どうやって載せているのか、裏側を紹介します。(朝日新聞校閲センター・原島由美子) 【画像】作字した「ビャン」の文字はこちら 3日がかりで制作
漢字を創作 注目度を上げようと?
「ビャン」はしんにょうに月、馬、長、言、心などが入り組んでいます。 校閲記者は新聞やデジタルに登場するさまざまな文字を点検しています。難しい漢字も多く目にしてきました。 それでも2022年7月、朝日新聞別刷り「be」のコラム「街のB級言葉図鑑」で、「ビャン」が登場した時には、目が釘付けになりました。 コラムの筆者で、国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明さんによると、きしめんより幅の広い麺を使う、中国・陝西(せんせい)地方の郷土料理「ビャンビャン麺」にしか使われない漢字です。 どうして、こんなに画数が多い字が生まれたのでしょうか。 飯間さんは「さまざまな由来が伝わっていますが、真相は不明です。この麺を料理した人が名付ける時に、注目度を上げようと、おもしろがって複雑にしたと考えられます」。 個人が創作した漢字を発表し、それが一般化していくことは、日本でも江戸時代には文化として浸透してきたそうです。 「このコラムでも『ビャン』を使いたくて」と飯間さん。この時、朝日新聞社が新聞で使う字に「ビャン」はありませんでした。使いたい字がない場合は作ります。 これまでも人名や地名などの漢字で「作字」をしてきました。明治から昭和にかけての活版印刷では、職人が木片や鉛合金などの角材に、1文字ずつ手彫りしていたのです。 この職人たちは、美しい文字や記号を彫って、活字のもとになる種字を作りました。種字彫刻師であり、「活字の種を作った人々」とも称されます。今でいえば書体デザイナーです。