『GEMNIBUS vol.1:ゴジラVSメガロ』上西琢也監督 自宅の布団の上でモーションキャプチャ【Director’s Interview Vol.417】
自宅の布団の上でモーションキャプチャ
Q:『シン・ゴジラ』(16)も担当されていたそうですが、ゴジラの造形はメインでやられていたのでしょうか。 上西:そうですね。CGのゴジラ3形態分を担当していました。第3形態は手伝ってもらいましたが、第2形態と第4形態は自分の手で仕上げています。 Q:今回のゴジラのデザインは、ベースにした時代などあったのでしょうか。 上西:自分は『ゴジラ』(84)から『ゴジラVSデストロイア』(95)までの世代なので、そのゴジラをベースに、『シン・ゴジラ』のディテールも入れつつ、歴代のゴジラを参考にしてバランスを整えました。 初代ゴジラは原爆のキノコ雲からデザインされていてデザイン画も残っている。そういう爆発煙のディテールを入れることで、ゴジラのキャラクター性が出来てくるんです。それで今回は、まずCGで爆発を作り、その爆発のもくもくした煙をCG上で物体として固め、その固めた形状を顔や体に貼り付けていきました。だから、煙を体に貼り付けて作った感じがありますね。 Q:レジェンダリー版ゴジラにはどんな印象がありますか。 上西:あれはあれで楽しく観させてもらっていますが、CG技術者的にはパッと画を見るだけでその裏にある膨大なお金が一瞬で分かっちゃう。それを享受できるのはすごく良いですけどね(笑)。 Q:メガロは着ぐるみ感がありましたが、あえて意図されたのでしょうか。 上西:メガロとゴジラの動きは自分でモーションキャプチャーでやっています。「フルトラッキング」という、バーチャルVチューバーの方たちがよく使っているVRの機材があるんです。それを使って、スタジオなどではなく、自分の家の布団の上でやりました(笑)。
プレビズを作って臨んだ実写撮影
Q:電車越しに見るシーンが臨場感があって素晴らしかったです。あのシーンは実写を撮った上で合成されたのでしょうか。 上西:そうですね。いろんな電車に乗って都内をぐるぐる回って撮りました(笑)。“生活空間越しの怪獣”というのをやりたいんです。今回は規模的に断念しましたが、もっと大きな作品で怪獣をやるなら、室内越しや屋上越しの視点を作りたいですね。 Q:戦車が来るシーンは渋谷と恵比寿の間ですよね。あれは風景だけを撮られたのでしょうか。 上西:まさにその場所です。現場では人止めをしてもらい、電車がいい具合に通るときを見計らって撮らせてもらいました。カメラを動かして撮っていますが、後でCGで合わせられるように「こういうルートで、こう撮ってください」と細かくお願いして撮っていただきました。 Q:実写部分の撮影はいかがでしたか。 上西:自分の監督作で実写を撮るは初めてだったので、事前にCG上でプレビズを作っておきました。人と建物の配置をする場合の距離など、事前に全て調べて撮影に臨んだので、撮影現場で迷うことはありませんでした。なるべく現場で困らないように、やれる準備は全てやっておきました。 Q:自衛隊の部隊が一斉射撃をするシーンがありますが、あれは実写でしょうか。CG上で人を動かすのと、実際の人に指示をするのでは勝手が違いそうですね。 上西:あれは実写ですね。人の体の動きってそれぞれ癖があるので、指示が難しかったです。あのシーンも頑張れば全部CGでいけたのですが、自分に無い引き出しはまさに人の動きだと思うので、あえて実写でトライして良かったと思います。 Q:バトルシーンのアクション演出はどのようにされたのでしょうか。 上西:怪獣好きな人って、脳内で怪獣を戦わせるじゃないですか(笑)。そこの精度をひたすら上げていって、頭の中でバトルを構築させた段階で一旦CG上で再現するんです。その後、どこにカメラを置いたら映えるかをCG上で検証していく感じです。怪獣が組んず解れつしているラフを作って、それに対してカメラをたくさん置いて、その素材を全部並べて編集していく。だから、コンテ通りにやっていく感じではなかったですね。 Q:実写と違ってカメラアングルが無限なので、決め打ちが難しそうですね。 上西:やっていると「これいいな!」っていうアングルは大体決まってくるんです。意外と絞れますよ。
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