DVで別れた元夫は、4歳の娘をなぜ道連れにしたのか 面会交流中の殺人、悲劇を無視して進む「親権」議論の危うさ
共通の友人に仲介してもらって数回会わせると、要求はその後、増えていった。「毎週会いたい」「お泊まりもしたい」 幼稚園の予定などもある中、絵美さんの精神的な疲労は積もっていった。仲介してくれていた友人からも「元夫から要求の電話が毎日何時間もある」と連絡があった。これでは友人に迷惑がかかり、すべての要求に応じるのは難しいと判断し、侑莉ちゃんを元夫に会わせるのをいったん中断した。 すると、元夫は家庭裁判所に面会交流調停を申し立てた。調停を経て、面会は月に1回と決まった。 事件はその直後、初回の面会交流の日に起きた。 ▽ずっと繰り返した「ごめんね」 2017年4月23日。「パパが遊びに連れて行ってくれるよ」。侑莉ちゃんと元夫はその日、映画を見る約束になっていた。「また夕方迎えに来るからね」「バイバイ」 それが最後になるなんて、考えてもみなかった。 約束の時間になっても、元夫から連絡が来ない。電話もLINEもつながらない。思い当たる場所を探しても姿が見えない。夜になり、警察にも捜索を依頼した。
警察は元夫の家に向かった。かつて家族3人で住んでいた場所。ベランダのガラスを割って室内に入ると、侑莉ちゃんは床に倒れ、元夫は首をつっていた。 連絡を受けた絵美さんは翌日、警察署で遺体を確認した。首を絞められた侑莉ちゃんは、うっ血して変わり果てた顔になっていた。 「ごめんねっていう言葉しか出てこなかった。ごめんね、ごめんねって、ずっと謝っていた」 思い出すと、今も涙があふれる。 ▽愛情たっぷり、自慢の娘 侑莉ちゃんは、明るく元気な子だった。 幼稚園はほぼ皆勤賞で、表彰されたこともある。友達も多く、誰にでも「どうぞ」とおもちゃを譲る優しさを持っていた。絵が上手で、色とりどりの服を着た女の子の絵をたくさん描いた。自分で「お勉強がしたい」と言い出し、塾に通った。自分から宿題もした。聞き分けがよく、絵美さんが「お絵描きは9時半までだよ」と言うと、時間になれば「おやすみなさい」と自分から寝に行った。