海自艦艇部隊の「特定秘密」、1000人無資格のまま…戦闘指揮所の急場しのぎ続く
海上自衛隊の艦艇部隊で「特定秘密」が違法に取り扱われていた問題で、海自が新たに資格を取得させる必要があると判断した隊員約2000人のうち、半数がまだ取得できていないことがわかった。手続きに時間がかかっているためで、現場では急場しのぎの対応が続いている。(溝田拓士) 【図】一目でわかる…海自艦艇部隊では「特定秘密」の違法な取り扱いが常態化していた
適性評価を受ける隊員らは、数十枚に及ぶ「質問票」に身上や経歴を書き込んで申請する。審査では必要に応じて面接や公的機関への照会も行われる。隊員のプライバシーにも踏み込むため慎重に進められ、海自では書類を提出してから資格を得るまでに4か月から半年程度かかる。海外で活動していた隊員はすぐに書類を出せず、11月末までに資格を得られた隊員は約1000人にとどまる。
防衛省は7月、陸海空の自衛隊などで特定秘密を巡る不正事案が計58件あったと発表。海自は最多の45件を占めた。特定秘密保護法の解釈を誤り、多くの艦艇の戦闘指揮所(CIC)で無資格者が特定秘密を知り得る状態になっていた。
海自は対策として、CICに出入りするすべての乗組員に適性評価を受けさせることを決定。対象者を全海自隊員(約4万2000人)の約5%にあたる約2000人と見積もって審査を進めた。「対応する人員を増やしているが、業務量も膨れ上がっている」。この幹部はそう打ち明けた。
無資格者は戦闘指揮所に立ち入り禁止
護衛艦の運用に不可欠な情報が集約されるCICは艦艇の頭脳とも言える空間だ。コンピューター画面にはレーダーで収集した艦船の航跡情報などの特定秘密が表示され、秘密を含む言葉も頻繁に飛び交う。
海自の艦艇部隊では、特定秘密が表示されるモニター付近に無資格者を近づかせないようにするなどしていた。しかし、特定秘密を扱う際は、同じ空間に無資格者がいると「知り得る状態」となり、違法と判断される。海自の対応は不十分だった。