海自艦艇部隊の「特定秘密」、1000人無資格のまま…戦闘指揮所の急場しのぎ続く
問題の発覚後、有資格者には識別票を身に着けさせるなどし、特定秘密を扱う際はCICへの無資格者の立ち入りを禁止した。その結果、CIC内で勤務する隊員の業務負荷が上がっているという。
さらに艦橋に特定秘密を表示する装置を置いていた一部の艦では、その機材を撤去した。艦橋に無資格者も出入りするためだ。
艦長は基本的にCICで指揮を執るが、艦橋に移った時でも状況をリアルタイムで把握する必要がある。艦橋では伝令の形で報告を受けることになり、意思決定のスピードに支障も出ているという。
管理システムの導入、段階的に
防衛省は今後、適性評価の申請や登録などを管理するシステムの導入を段階的に進める。機密情報を扱う区画への入退室も一元的に把握できるようにする。人的ミスをなくす狙いで、担当者は「早期完成を目指す」としている。来年度予算の概算要求でシステム構築に向けた調査研究費約1億円を計上している。
◆特定秘密=防衛や外交、スパイ防止、テロ防止で特別に秘匿が必要な情報。特定秘密保護法に基づいて指定される。家族関係や犯罪歴、経済状況などを確認する「適性評価」を受けて、漏えいの恐れがないと認められなければ取り扱うことができない。漏えいした場合、最高で懲役10年の刑事罰が科される。
人手不足で隊員への負担増「おざなりのツケ」
海自が新たに約2000人もの隊員に適性評価を受けさせていることは、長年にわたり、情報保全体制をしっかりと整備してこなかったツケが回ってきた格好だ。
自衛隊には、特定秘密保護法が施行された2014年以前から、自衛隊法に基づく防衛秘密の保全業務があった。ある防衛省幹部は「情報保全にかかわる運用を工夫する時間は十分にあったはず。対応がおざなりになっていたのでは」と疑問を口にする。
中露の軍事活動が活発化する中で海自の任務は増加し、人手不足で隊員の負担は増している。特定秘密が不適切に取り扱われていた背景には、海自の慢性的な人手不足もあると指摘されている。
自衛艦隊司令官を務めた湯浅秀樹氏は「資格を取得する手続きや、有資格者の管理の簡素化を図り、現場の負担を少しでも減らさなければ隊員はさらに疲弊する」と語る。