豊胸した元男性「認めてほしいわけじゃなく自分らしくいたい」、LGBTQというカテゴライズへの違和感
■LGBTQというカテゴライズより重要なのは「自分」という“個”
LGBTQへの理解が深まる昨今、当事者たちが生きやすい社会へと整備が進む一方で、意図しない“差別”が生まれている可能性も捨て切れない。そもそもLGBTQや“男の娘”というジャンルで語られることもある種の“差別”という声もある。 「確かに。そうくくられてしまうことは、YouTubeで発信している側じゃなかったら嫌だったと思います。発信する場合はそのくくりは分かりやすく視聴者に伝えられる。でも世の中にはさまざまな性自認の方がいる。それぞれ悩み、こうなりたいけどできない、という方もいます。でも、どこかのきっかけで“自分らしく”なれる瞬間は誰にもあると思っていて。自分は自分。誰も同じ人はいない。それを無理にLGBTQにくくらなくてもいいんじゃないかって思います」 もちろん、その差別撤廃のために過去に多くの人が血の滲むような苦労をしてきたのはわかっている。その上にあぐらをかいているわけでなく、“自分らしさ”という“個”の発想も今後は大切にしていきたいということだ。 ちなみに彼女が凛という名に改名したのは、「凛」という漢字にはクールさと格好良さが内包されているから。生物学上は男性であり、徐々に少しずつ女性へと変化していった、その「二面性」を表す言葉として最適だと考えたからだと話す。 さらに「きっと私は先天的ではなく、後天的なんですよ」と明かす。女性と交際した時期もあった。女性、男性と関係なく人を好きになった時期もあった。これまで彼女がたどってきた人生、体験したこと、感じてきたこと、そして「後天的に」女性となったこと。そのどれをとっても「杉本凛」でしかなく、LGBTQと単にくくるのはためらわれる。 「世の中にはいろんな人がいて、自分のような人を認められない方もいらっしゃると思います。でもそれは仕方がない。だから全員に『LGBTQを認めて』『男の娘の人権を認めて』とは言わないし思いません。ただ理解してくれる人、わかってくれる人もいて、そんな大事で大切な人たちと過ごしていきたい。それで、いいんです」 (取材・文/衣輪晋一)