わが子の発達をほかの子と比べてしまう…「ふたりぼっち」の時間がやがて笑って見守れるタフさに【作者に聞く】
知的障害+自閉スペクトラム症の長女とイヤイヤ期の次女の育児に奮闘しながら、自閉症育児の悲喜こもごもを発信しているにれ(@nire.oekaki)さん。子どもの成長への不安や悩みを赤裸々に描いていて、大きな反響を呼んでいる。 にれさんが新たに描き下ろした漫画とエッセイを加えた電子書籍「今日もまゆみは飛び跳ねる~自閉症のわが子とともに~」が発売された。 【漫画】本編を読む ウォーカープラスではこの電子書籍の中から特に印象的な漫画を、にれさんのエッセイと共にご紹介。日々思い悩みながらもなんとか前に進むママと、確かに成長していく娘の姿を描く、共感必至エピソードをお届けします。 ■ふたりぼっちで過ごした時間 同年代の子ども達の集まる場から足が遠のくと、スッと気持ちがラクになりました。そしてまゆみと一緒にどんどん人のいない所へ行くようになり、よその子を見てはひとりでに傷ついていた自分の心にも気づきました。 視界に入る子をまゆみと比べたくない、出かけるだけで謝ってばかりになる毎日に疲れた、もう誰にも会いたくない……当時の私はこんな気持ちでいっぱいでした。家に籠りたくなる日もありましたが、外遊びで少しでもまゆみの発達を促したい思いに駆られて外へ連れ出すことだけは頑張っていました。 ただ、人には会いたくなかったので、公園へ行くのは決まって朝・お昼時・夕方などの利用者の少ない時間帯です。人口もそう多くない田舎に住んでいるため、このあたりの時間を狙えばほとんどふたりぼっちで過ごせました。ほかにも、イベントのない日の公共施設、さびれた住宅街の中の見落としそうなほど小さな公園、夕暮れの河川敷など、近隣市町を含めてとにかく人の来ない場所を求めてさまよい、そのどこででもまゆみは楽しそうに遊んでいました。 まゆみの発達をより促すには同年代の子ども達と関わった方がいいことは分かっていましたが、発達の遅れへの不安で潰れそうな毎日の中、みるみる開いていく周囲との差を直視せざるを得ない場所へはどうしても足が向きませんでした。そんな自分を「なんて弱い母親なんだろう」と情けなく感じていましたが、それでも進んでまゆみとふたりぼっちになる時間が当時の私には必要でした。 わが子だけを見つめ続けているうちに、やがて自然と「比べるのは過去のまゆみだけにして、できるようになったことを喜ぼう」「まゆみのありのままを受け入れつつ、まゆみに備わっている力を信じよう」といった考えになり、2年近くかかりましたが支援センターにもまた通えるようになりました。 その後SNSを始めて、同じ境遇のママさん・パパさん達の投稿やコメントを見る中で、子どもの発達への不安が膨らむにつれてふたりぼっちを選択していった親は私だけではなかったことを知りました。 その数はあまりに多く、同じ孤独を抱えていた人達が全国に沢山いたのです。一旦集団から離れてわが子と過ごすことは、自分の心を守り、現状を受け入れるための行動であって、何も恥じることなどなかったのだと思いました。 みんな同じ経験をしてきたんだなと思ったのが、「ふたりぼっち期間を経て、集団の場へまた行けるようになった」という話を多く聞いたことです。少し胸が痛むことはあっても、笑って見守れるタフさはふたりきりで過ごした時間を通して手に入れたものなのかもしれません。 まゆみと同じ障害程度の子に実生活で会うことはそうそうありませんが、画面の向こうには同じ悩みを抱えた親子が沢山いて、自分だけではないと知れたことは子育てをする上でとても大きな力になりました。 自分が助けられた分、私も発信することで誰かを助けられたらと投稿を始めましたが、実は今でも助けてもらうことや教えてもらうことの方が多いので、ちゃんちゃらおこがましい動機で活動を開始した己を少し恥ずかしく思っています。今の私にできるのはわが家の事例のご紹介だけですが、もしどなたかのお役に立てるのであればこんなに嬉しいことはありません。
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