メルカリ、不振の米国事業 復活の切り札は「日本から逆輸入のヴィンテージ」
台湾でも日本版メルカリから直接購入
越境取引での新たな取り組みも始まっている。メルカリは8月29日の会見で、越境取引を通じた台湾進出を発表した。台湾の利用者は、新たに設けられた台湾版メルカリのサイトから日本版メルカリの商品を購入することができるようになった。他社のプラットフォームを通じてではなく、メルカリに会員登録して購入してもらうことで、利用者の声や情報をサービス改善に生かしていく狙いがある。 台湾には、日本のアニメグッズなどを求めて来日する人も多く、メルカリの越境取引における取引金額・取引件数はともに中国に次いで2位となっている。潜在的な需要が大きいとして進出を決めた。現時点では、台湾からの出品はできず、日本の商品を購入する機能のみのサービス展開となる。出品機能の拡充については、需要も見極めつつ検討していく。 今後も、日本の商品に対する需要が高い国・地域を中心に越境取引を広げていく方針だ。迫氏は「日本国内でモノを循環させるのではなく、越境取引で需要やトレンドが多様化すれば、より多くのモノが長く使われるようになる」と話す。コーチの中古バッグのように、日本では必ずしも需要が高くなくても、海外で思いのほか高値で売れた、という事例が増えれば、取引の活発化が見込める。 越境取引の拡大は世界的な潮流だ。経済産業省の調査によると、21年の越境ECの世界市場規模は推計7850億ドル(約110兆円)だったが、30年に7兆9380億ドルに拡大すると予測されている。その間の年平均成長率は推定約26.2%と高い。メルカリの米国事業のライバルとなる、イーベイの日本法人の担当者によると、23年はイーベイにおける日本から海外への販売額が2桁成長を記録したという。 メルカリは、24年9月10日に累計出品数が40億品を突破するなど豊富な商品在庫が強みだ。加えて、米国では対面取引にも対応するなど、イーベイとの差別化を図っている。越境取引の活発化を米国事業の反転につなげられるか。かつてない追い風が吹いていると言えそうだ。
岡山 幸誠