ラグビー大学選手権決勝、今季はなぜ国立じゃない?『会場の都合』は理解も…協会トップには粘り強い調整をお願いしたい
◇コラム「大友信彦のもっとラグビー」 年末年始に行われる第61回ラグビー大学選手権の日程が30日、日本ラグビー協会から発表された。だが、ファンの間からは悲鳴が聞こえてきそうだ。1月13日に行われる決勝が、例年行われていた国立競技場ではなく秩父宮ラグビー場で行われるのだ(1月2日の準決勝は国立開催)。 大学選手権の決勝は1964年度の第1回大会から72年度の第9回大会までは秩父宮で開催されたが、73年度からは国立競技場へ。以後、解体・新設工事が行われていた14~18年度を除き、すべて国立で行われてきた。 約6万人を収容する国立に対し、秩父宮は過去は定員2万5000人とうたっていたが現在は2万人強。人気を誇る大学選手権の決勝を行うハコとしてはちょっと寂しい。 なぜこうなったのか? 日本ラグビー協会に問い合わせると「会場の都合」との答えだった。大学選手権決勝が行われる13日、国立競技場では全国高校サッカーの決勝が組まれている。だがそれは毎年のことだ。これまでは成人の日の3連休の土日を使い、何とか日程をやりくりして国立開催のバトンをつないできたではないか。 もっとも、「会場の都合」には複数の要因があるようだ。競技の安全確保の観点から、各会場とも芝の管理には以前よりも神経質になっている。リーグワンの創設によりラグビーのスケジュール自体過密化している。中継局との折衝も含め、多くの要素を調整するのは簡単ではない。
これは国立競技場だけの問題でもない。今季の大学選手権で関西圏での試合は和歌山市と三重県鈴鹿市で組まれ、花園ラグビー場など京阪神大都市圏での試合はゼロ。これも同じく「会場の都合」だという。 一方で、有力校の登場する準々決勝が秩父宮ラグビー場で行われる12月21日はリーグワンの開幕日。東京SG対埼玉という注目カードが味スタで組まれている。どちらの試合も見たいファンは泣きたい思いだろう。 同様の事態は女子ラグビーでも起きている。11月16日に行われる全国U18女子セブンズの決勝トーナメントは熊谷Bでの開催。同日の熊谷Aでは全国高校ラグビーの埼玉予選決勝が組まれている。だがこれは、決勝だけでもAグラウンドで開催するのも可能なはず。むしろ男女の高校ラグビーを併催できれば新しい価値を生み出せるだろう。 すべてを満たすのが困難なのは理解するが、ステータスの高い試合、それも卒業のある高校や大学の最後の大会にはそれにふさわしい舞台を用意してほしいと思う。協会トップには粘り強い調整力を発揮していただけるようお願いしたい。 ▼大友信彦 スポーツライター、1987年から東京中日スポーツ・中日スポーツでラグビーを担当。W杯は91年の第2回大会から8大会連続取材中。著書に「エディー・ジョーンズの監督学」「釜石の夢~被災地でワールドカップを」「オールブラックスが強い理由」「勇気と献身」など。
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