「トマトのフレグランス」が世界的に人気! 香水業界の新トレンドが支持されている理由
トマトとノスタルジーの関係
その理由をフィヒトルはこう分析する。 「私たちはノスタルジアを受けいれているのです。食べ物から着想を得た香りで育った世代は、今、より気持ちが高揚しつつも、少しだけ謎めいた香りを期待しています」と、彼女は説明する。 トマトを使った商品で成功を収めた創始者の多くは、人々がトマトに対して好意的に捉えていると感じている。
「夏のトマトサンドイッチや、ファーマーズマーケットの高品質なトマト、おばあちゃんが昔作ってくれたおいしいパスタにいたるまで、人々はトマトをとても愛しています」と、「ネッテ」の創始者キャロル・ハン・パイルは言う。 「家で美味しいトマト料理ができたとき、家の中にトマトの香りが漂い、とてもフレッシュな気分になります」
ヘアケアにもトマトの香りが進出
トマトの香りはホームフレグランスだけに留まらない。パーソナルケア製品もまた、心温まる逸話と共にトマトのブームにのっている。 例えば、「ARKIVE Headcare」の創始者アダム・リードは、祖母の温室で過ごした午後に着想を得た。彼の祖母は、他の葉物野菜と共にトマトを育ていたという。 それから数十年後、今やトマトの葉は、彼のヘアコレクションに登場する3つのフレグランスのうちのひとつ、“ノーワンエルシー”のトップノートに採用されている。
トマトのエッセンスは存在しない?
ここ数カ月でトマトの人気が高まっているが、キャンドルや香水という形でトマトの香りを再現するのは、思った以上にチャレンジングなことだ。 「人々の期待を裏切るリスクを負って言いますが、トマトやトマトの葉のエッセンスは存在しません」と、「カリエール フレール」のクリエイティブデイレクター、ジュリアン・プルヴォストは言う。
「私たちのブランドの、トマトルームスプレーとトマトキャンドルは、トマトとは何の関係もない合成分子と天然の物質から再現されています」とプルヴォストは明かす。 合成香料は、香水の世界では決して珍しいものではなく、原料から蒸留や抽出が不可能な香りもある。むしろ、ある香りのエッセンスを、そのノートがなくても再現するためには、嗅覚における錬金術が必要になる。それはつまり、アートと科学の融合といえるのだ。