肩や目を爪で切り裂かれ…クマに襲撃された男性、「頭が真っ白」危機一髪の恐怖体験を証言
人里周辺で暮らし、街中に出没するクマ「アーバンベア(都市型クマ)」が人間を襲撃する事案が相次いでいる。「頭が真っ白になり、気が付けば叫んでいた」。7年前にクマに襲われたという秋田県五城目(ごじょうめ)町の稲作農家、澤田石(さわたいし)俊行さん(75)が恐怖の体験を証言した。 遭遇したのは秋の稲刈りシーズン。夜間に稲のもみを保管する倉庫の壁面に穴が開けられる被害が数日間連続で発生し、「クマの仕業じゃないかとは予想していた」。このため夜は倉庫に近づかず、朝に修繕作業をしていた。 「きょうは穴が開いていない」。ある朝、ほっとして倉庫のシャッターを上げると、全長約80センチ程度の黒い物体が目に飛び込んできた。それが立ち上がり、クマだと認識した瞬間、つかみ合うような状況に。しかし、腕力でかなうはずもなく、右肩や右目を爪で切り裂かれた。クマは逃げていったが、澤田石さんは一時入院。現在でも右目の不調のため通院している。 澤田石さんは「山の周りから人が減っていっているのが要因だろう」とみる。かつて野菜農家はクマなど獣害対策のため電気柵などを仕掛けていた。「林業従事者や山間の農家の存在がクマと人間の生息域を自然と分けて、動物が人里に現れないようになっていた」というが、人口減少により地方では人間の居住エリアが狭まる傾向にあり、クマの生息域が広がっているとの指摘がある。 命の危機を感じた恐怖は今でも忘れられないと澤田石さん。「クマが住む世界はこれまでと変化している。負傷者が増えないような対策が必要だ」と訴えた。