日本の介護施設利用者「80歳以上の寝たきり率」はスウェーデンの約10倍で米の6倍以上…その理由を理学療法士が解説
◆ここが寝たきりの分かれ道 ケガや病気が快方に向かえば、寝たきりを改善することも、その後に寝たきりを予防することも十分に可能だといえます。 しかも、それは、単純に年齢で決まるものでもありません。 たとえば、私たちの施設に通っていらっしゃる鈴木さん(仮名)は、2023年の初め、脳卒中を患いました。 病状が落ち着いてからも体にまひが残り、2月からの3カ月間は歩こうとしても転倒ばかりしていたそうです。 実際、私たちの施設に通い始めた当初は、「こんなんじゃあ、もう俺、歩けないな……」などと、弱音を漏(も)らされることもありました。 しかし、もともとジムで体を動かすことにも慣れており、熱心にトレーニングマシンなどで機能向上訓練を続けた結果、普通に歩くことのできる日がずいぶんと増えたのです。 「こんなんじゃあ俺、歩けないな……」と感じていらっしゃったときに、以前と同じように歩けるようになることをあきらめて、機能向上訓練に取り組まず、外出を控えてばかりいたら……。 鈴木さんは、体のバランス感覚を取り戻すことなく、筋力は衰える一方で、今ごろは普通に歩けるどころか、ほとんどの時間をベッドの上で過ごしていたかもしれません。 現在の鈴木さんの姿を見れば、普通に歩けるようになるか、寝たきりに近づくかの分かれ道で、彼が最善の判断を下されたのだとわかります。
◆「老化」と「加齢」は別物 寝たきりになるのは、決して「年だから」ではありません。 そればかりでなく、最近では、「年だからといって、必ずしも老化するとは限らない」ということさえ、明らかになりつつあるのです。 「筋肉量を測定してみたら俺、30代並みの筋肉量だって。もう50代なのに、すごくない?」などと、自分の測定結果に気をよくした経験はありませんか? あるいは、周囲の人から、「私、まだ30代なのに、血管年齢を測ってみたら、60代って言われたんだけど。ひどくない?」といった言葉を聞かされた経験がある方もいるかもしれません。 一言でいうと、前者は老化が進んでおらず、後者は老化が進んでいるということになります。 つまり、老化は「可逆的」、わかりやすくいうと、一定に進むとは限らず、場合によっては後戻りすることができるもので、その人の努力次第で進んだり、進まなかったりする現象なのです。 「でも、実際に、年はとりますよね?」 確かに、人は生まれてから亡くなるまで、一定の方向に年をとっていきます。 年をとること、「加齢」は「非可逆的」で、いくら努力しても、たとえ1歳でも年が減ることはありません。 つまり、まず、「老化」と「加齢」を別物として考える必要があるのです。 「加齢」は避けられない一方で、「老化」は予防したり、進行を遅らせたりすることが可能です。 そして、「老化」することを最後まであきらめなければ、回避できる寝たきりもたくさんあると感じています。 ※本稿は、『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)の一部を再編集したものです。
上村理絵
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