単純労働が“不法就労”となるのはなぜ? 外国人労働者が厳格に仕事を「限定」される深い理由
5月中旬、人材派遣会社の社長らが逮捕された。容疑はベトナム人、ネパール人の男女2人を群馬県の建築資材工場で、資格外の労働をさせたこと。2人の外国人は国際業務などの高度な在留資格で入国しており、単純労働させることは違法だった。 【表】在留外国人数の推移(入国在留管理庁HPより) この報道に対し、ネット上のコメントは「なにがダメなの?」「別にいいじゃない」といった声が多数を占めた。
外国人の在留資格を管理する入管法
外国人が合法的に日本に滞在し、活動するには在留資格が必要となる。その管理は「出入国管理及び難民認定法」(入管法)によって公正に行われている。今回のように、大学卒業などによる知識を活かして働く人は「技術・人文知識・国際業務」という在留資格が与えられており、いわゆる工場で働くような単純労働は許可されていない。 「毎年多くの外国人労働者が入国してくる中で、無秩序に在留資格を与えてしまうと、日本人の職を奪うことにもなりかねません。入管法7条1項2号に”我が国の産業および国民生活に与える影響その他の事情を勘案し”とあり、それにのっとって、人手不足が顕著な業種などを見定めながら、在留資格を厳格に区分して、労働力を調整しているんです」 こう解説するのは外国人雇用問題に詳しい、杉田昌平弁護士だ。 いまや日本の労働市場は、外国人労働者なしには回せないといえる深刻な人手不足。だからといって、誰でも無秩序に海外人材を受け入れてしまえば、弊害が出てくる。そこで、外国人労働者の出入りを法律によってコントロールしている。
進む入管法改正の目的とは
日本は長らく「人手不足」のための外国人労働力確保を表立ってはしてこなかった。反発の声も少なくなかったからだ。その姿勢を転換し、明確に人手不足解消の一環として外国人人材の活用を解禁したのが2019年施行の特定技能制度だ。この時改正された入管法がいままた、改正へ向け着々と動いている。 「これまで、外国人材活用のひとつに技能実習制度がありました。その名目は、国際貢献を見据えた技術移転です。その後、人材確保を名目にした特定技能制度が2019年に施行され、さらにより日本の情勢と合わせるため、人材確保に加え人材育成を目的とした新たな外国人雇用制度『育成就労』へシフトさせようと動いています。つまり、制度を日本の人材不足の現状によりフィットせるための改正ということです」(杉田弁護士) 「育成就労」では、基本的に3年間の育成期間で特定技能1号の水準の人材に育成していくことを目指す。実質的に技能実習を吸収し、代替する仕組みとなる。特定技能制度は日本の現状に合わせながら適正化を図り、技能実習が担った役割を一部受け継ぐ形で存続する。