【#佐藤優のシン世界地図探索82】沖縄から「日本が生き残る知恵」を学ぶには?
佐藤 でも、いつ完成するんですかね? ――長くかかりそうです。 佐藤 それでいて、米軍は普天間に居座りたいですからね。 ――那覇は近いし、便利だし。 佐藤 滑走路も長いですし、見晴らしもいいです。 ――すぐに遊びにも行けるし、と。 佐藤 そう、非常に恵まれた環境です。 ――すると、まず、日本が生き残るための知恵と思考方法を学ぶには、まず、沖縄の歴史と現状を知れと。 佐藤 そういうことになりますかね。 ――さらに佐藤さんは名護市・名桜大学で集中講義をしていますが、そこでも沖縄について、学生と共に文献を精読して議論しているそうですね。 前述の「ウチナー評論」で触れていますが、講義では高良倉吉氏(琉球大学名誉教授、元副知事)の『琉球処分』(岩波新書、1993年)をテキストにしているそうですが、それを引用すると 『<沖縄では被害者的歴史観が長く風靡しており、もはやイデオロギーの域に達している観さえある。(中略)つまり「暗い」、「苛められてきた歴史ばかり」なのだ>(8頁)』 そして、この歴史史観を変えようとしているその根拠が、 『<高良氏は、沖縄人の大多数が日本に復帰したことを満足したという前提で、歴史像を再構成する必要性を問う。各種の世論調査によれば、復帰はしたものの、復帰の年から一九七七年までの五年間は、復帰してよかったと答えた沖縄県民は五割程度しかいなかった。しかし、現在では大多数の県民が復帰してよかったと答えるまでになっている。県民の大多数が「日本」復帰を希求し、県民の大多数がやがてその結果に満足したとすれば、歴史家は、この県民世論を背景に歴史像を再構成する義務を負うべきだ。(後略)>(180~186頁)』 と、『琉球処分』では大多数の沖縄県民が復帰して良かったとしています。この本が出たのは1993年。ところが、佐藤さんは2023年に明星大学の熊本博之教授らがまとめた「政治参加と沖縄に関する世論調査」のデータを出してきます。 『<「自身を『何人』と思うか」という問いに対し、「沖縄人で日本人」が52%と過半数を超えた。「宮古人で日本人」「八重山人で日本人」を合わせると、複合的アイデンティティーがおよそ6割を占めた。「沖縄人」が24%、「日本人」が16%と続いた>』 つまり、復帰して良かったと考えている沖縄人は激減している。改めて伺いますが、日本の未来を生き残るための知恵と思考方法を沖縄に学ぶのは、難しいのでしょうか? 佐藤 できます。沖縄を日本の一部ではなく、対等のパートナーとしてみるのです。そうすれば、日本と沖縄の相互関係が進みます。 次回へ続く。次回の配信は2024年11月8日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生