能登半島地震の災害派遣に「行く」「行かない」で口論も…自衛隊員の知られざる「過酷すぎる」勤務実態
過酷な勤務実態は事実なのか。そして今後、改善する動きがあるのか、防衛省に対して質問状を送ると、こんな答えが返ってきた。 上記に記した「72時間拘束が月4回ある勤務実態」については「一例に示された勤務形態が存在するのか現時点で把握しておりません」としたうえで、 「自衛官の勤務時間は、防衛大臣の定める日課によるものとされ、自衛官の勤務時間及び休暇に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第65号)により、1日の勤務時間が休憩時間(1時間)を除き7時間45分となるよう定めております。 また、自衛官は勤務時間外においても、行動、訓練、演習のため又はその他勤務の必要により、勤務することが命じられた場合には、何時でも職務に従事するものとされており、行動、訓練、演習等のために必要である場合には、部隊等の長は特別の日課を定めることができます。 公務の運営の必要上、自衛官に長時間の勤務を一定期間命ぜざるを得ない場合については、人事担当部局等に事前又は事後に報告し、勤務時間の状況をチェックするなど、長時間の勤務を必要最小限にとどめることとしております」とした。 過酷な勤務が続いたら、仕事の精度が落ちる可能性に対しては「ご質問の内容が、具体的にどのような状況下で行われたものなのか明らかではないため、お答えすることは困難です」と前置きした上で「やむを得ず継続して長時間の勤務をさせた場合には、速やかに面談を行うなど精神面を含む健康状態を把握し、臨時の健康診断の実施や医師の診察を受けさせております」と自衛官の体調に留意しているとの返答だった。 上記で紹介した、元日に地方に帰省したばかりの自衛隊員が1月2日に職場に帰ったケースのように、自衛隊員が呼び戻された時の旅費が自己負担になることについては「国家公務員に対して支払われる旅費は、『国家公務員等の旅費に関する法律』において定められ、(中略)帰省は私事旅行であって公務出張には当たらないことから、在勤地と帰省先との間の移動に要する費用については、旅費は支給されません」として支払う義務がないと主張した。 今後の「自衛隊員の働き方改革」や「給与体系」の改善については「働き方令和6年度政府予算案に自衛官への手当の新設を含む拡充に必要な経費を計上した」としたうえで「自衛官の勤務実態調査や諸外国の軍人の給与制度等の調査を進めており、今後、この調査の結果も踏まえながら、自衛隊員の任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与・手当の在り方について、様々な角度から検討する」としたが、実際に具体化するかは未知数だ。 冒頭のコメントにあったように、災害派遣で被災者を助ける職務に従事した自衛隊員の多くは、自分の体調よりもただひたすらに被災者を救うことを考える。周囲も、「自衛隊員は真面目で仕事に誇りを持ち、困難な状況でも乗り越えられる」と期待し、自衛隊員もそれに応えようとする。しかし、休日を返上して働いたり、仕事のために予定外の帰隊をした場合の交通費などは、自己負担ではなく、自衛隊員の負担分を出してあげることが彼らの思いに報いることになるのではないだろうか。 組織が隊員を大切にしなければ、帰属意識は低下し人は離れてしまう。口にできない分、心の中で悲鳴をあげている自衛隊員の気持ちをくみとって、勤務、給与体制に柔軟性を持たせる時期に来ているのではないだろうか。
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