能登半島地震の災害派遣に「行く」「行かない」で口論も…自衛隊員の知られざる「過酷すぎる」勤務実態
自衛隊の中には、有給も代休も自由に取れるセクションもあるが、訓練や演習、災害派遣等の部隊行動のある部署では普段から外出や行動規制を強いられ、本当の意味で自由に過ごせる休日は少ない。正月休みは、遠出が許され、家族と長時間過ごせる特別休暇で非常に貴重なものだった。 今、能登半島の現場にいる自衛隊員は、休日返上で働いていることになり、一般的には「代休をどこかで取得するのだろう」と考えるが、実際は代休は溜まっていく一方。航空整備士、潜水艦・艦艇乗組員、パイロット、救急救命士など情報処理や専門資格など特別な資格を持つ自衛隊員の場合は交代要員がいないため、簡単に休むことは許されない。ある自衛隊員は「毎年、代休はほとんど使えずに消えていきます。有休をとることなんてありませんよ」と明かす。実際、使わなかった代休は1年ごとに消えてしまうため、自衛隊員は表に出ないところで悲鳴をあげているのだ。 前述のように、災害派遣をめぐって「行く、行かない」の口論が起きても仕方がない、と思わせるような、現役自衛隊員のあまりにキツイ勤務割出表をFRIDAYデジタルは独自入手した。その勤務表で驚くべき実態が判明した。 冒頭の「勤務割出表」は昨年のある月の勤務予定を示しており、●曹(Aさん)と士長(Bさん)の2人についての勤務予定がわかる。 「1」と書いてある日は「1直」(8:15から24:00)のシフト。「2直」は0:00から朝8:15の“夜勤シフト”。「1/2」は「1直の後に2直をこなす」シフト。「日」は日勤のことで8:15~17:00。「-」が休みだ。 Aさんの勤務予定を見るとこうなる。 3日(木):朝8:15~24:00 4日(金):0:00~8:15→8:15~24:00 5日(土):0:00~8:15→8:15~24:00 6日(日):0:00~8:15 上記を額面通りに受け取ると、72時間拘束している。「業務内容」の欄には「1直で2時間、2直は4時間の仮眠をとること」との旨が記載されており、休みは確保されているように見えるが、それでも睡眠時間は平均6時間に満たないし、連続して6時間寝ることが許されない勤務体制なのだ。 Aさんは、このシフトが毎週組み込まれ、この月だけで4回こなすよう命じられている。Bさんを見ても、同様の72時間拘束が月3回あった。このような過酷な労働環境が続くため、この職場では、途中退職や心身に故障をきたす隊員が多いという。 元陸上自衛隊の幹部職員はこう明かす。 「自衛隊員は特別職国家公務員、つまり国会議員と同じ扱いになります。いただく給料も、自衛隊員も国会議員も『俸給』といいます。つまり国に奉じている、ということを意味しています。自衛隊員は国から任命されている仕事をする身分です。自衛隊に入るときに『服務の宣誓』というのがあり、『事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」と職責を国民に対して誓う。つまり、自分の意思に反して『死にたくない』とは言えなくなります。その時点で基本的人権は実質、存在しなくなる。一般人から見て過酷な勤務実態が結果的にまかり通ってしまっているのは、その考え方が根底にあるからではないかと思います」