「子どもたちに罪はないのに」待ちに待った在留資格、一転して出してもらえず…クルド家族に厳しい現実
日本で生まれ育ちながらも在留資格のない子どもとその家族に対して、一定の条件を満たせば「在留特別許可」を出す――。2023年8月、当時の斎藤健法務大臣がそのような方針を示した。「子どもには何ら責任がない」という理由からの特例的な措置だった。しかし、それから1年経った今、子どもたちには厳しい現実が突きつけられている。(ライター・織田朝日)
●一転して「ビザが出ない」とされた少女
トルコ国籍のクルド人、レイラさん(仮名・高校3年)は、6歳のとき、日本で難民申請をしている父親を追って母親と兄と一緒に来日した。小学1年から学校に通っていたが、運が良いことに先生や友だちに恵まれ、容姿や国籍が違うことでいじめられることはなかった。 日本で生まれた妹がいることで今年1月、入管から「ビザ(在留特別許可)が出る」と連絡があった。家族の中でビザがでるのは、妹とレイラさんの2人だけで、両親とすでに20歳を超えた兄には出ないと言われたという。 「あなたたち家族のことを調べたけど、悪いこともやっていないし、病院の滞納金もないから」。両親や兄に出ないのは悲しいことだったが、日本に残り続けたいと思っていたレイラさんにとっては、またとないチャンスだと感じていた。 ところが待ちに待った半年後の今年7月、衝撃の事実を告げられることになる。一転して、家族全員のビザが出ないことになったのだ。驚いたレイラさんが問いただすと、「家族全員にビザが出ないならいらない」と渡された在留カードを突き返してきた家族が何組かいたと入管から説明された。 「あなたたちは(その家族と一緒の)グループに入れました」 あまりの出来事にレイラさんは愕然とした。自分たちは拒否する気はなかったのに・・・。 レイラさんの母親は、親戚でもない家族の判断で、なぜビザが出ないことになったのか、強い憤りを感じている。「娘を助けて・・」。筆者のインタビュー取材に何度もうったえる姿は、子どもだけでも幸せを願う母親の願いそのものだった。 レイラさんは、日本語を話せないクルド女性たちの通訳を頼まれることが多い。普段から付き添いで病院に行くうちに医療にも関心を持つようになり、医療事務の仕事に就くための専門学校を目指している。 専門学校に問い合わせると「受け入れることは可能だが、ビザがないといざ就職のときは難しい」と言われた。今年1月に入管からビザが出ると言われ、そのことを高校の先生に伝えたらとても喜んでくれていた。 「奨学金も出るね」。先生からそう言われて、やっと自分の未来が見えてきたかのようだったのに残念でならない。「それでも諦めることはできないので、専門学校へ行き勉強するつもりでいます。困っている人を助けたいんです」。そんな強い意思をレイラさんは見せている。