のん「自分が持っている怒りを直接的に表現している」ヒグチアイ書き下ろし楽曲「私にとって、怒りは原動力」
俳優を軸に様々なステージで活動を続けるのん。「表現者」としての多岐における活躍ぶりが認められ、先日「第16回伊丹十三賞」を史上最年少で受賞して話題を集めた。のんさんにとってのCHANGEとは?――。【第2回/全3回】 ■【画像】のん「自分が持っている怒りを直接的に表現している」楽曲『荒野に立つ』【Official Music Video】 映画『私にふさわしいホテル』は、しがらみのある文学界を舞台に不遇な新人作家・中島加代子(のん)と大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の権威ある文学賞を巡って繰り広げられる攻防をコミカルに描いた作品だ。のんさんのお気に入りのシーンは……。 「映画の最初の方で、山の上ホテルの東十条先生の部屋にメイドのコスプレで乗り込んでいくシーンです。そこで先生の仕事を邪魔しようと、先生のパソコンにシャンパンを掛けるところ。あそこは演じていてすごく面白かったですし、テンションも上がりました」
映画のポスターには「文壇下剋上」という表現が使われているが、加代子の”下剋上“な行動が見ていて、どこか鼓舞されたりもする。 「下剋上って気持ちいいですよね(笑)。演じていて加代子が下剋上していくのが本当に楽しかったです。この話は勧善懲悪ではないので、ライバルの東十条宗典先生が“めっちゃイイ人じゃん!”って感じにも思えてくるんです。でも、加代子自身は人としてどうかと思うことをしている人なので、人の目に映った時に気持ち良い人物であるように演じなきゃというのは意識していました」 この映画のタイトルに絡めて、のんさんにとっての“ふさわしい”(居心地の良い)場所は? 「おうちのお布団の中です。休みの日は一日中寝ている感じで、五度寝くらいしちゃいます」
憧れていたのは薬師丸ひろ子さん
昨今は表現者として様々なステージで活躍しているのんさんだが、最初はモデルとして芸能界での仕事をスタートさせた。俳優を意識し、憧れるようになったのは一人の俳優との出会いだったという。 「薬師丸ひろ子さんに憧れていました。主演された『野生の証明』、『セーラー服と機関銃』、『探偵物語』などの映画を観て、薬師丸さんが演じたキャラの強くてカッコいいところに惹かれたんです」 俳優デビュー後は、キャリアを確実にステップアップさせていった。その中でひとつの転機となったのは、片渕須直監督のアニメ映画『この世界の片隅に』(2016年)で主人公・北條すずの声を当てたことだった。本作は第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、前向きに生きようとするヒロイン・すずと彼女を取り巻く人々の日常を描いた作品で第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション賞をはじめとする多くの賞を受賞し、海外でも評価の高い作品だ。 「声の演技をやってみたら、カタチを作るということがすごく重要なことだと気づきました。カタチはもちろん大事なんですけど、私はカタチを作っていくということよりも、役柄を掘り下げて内面を埋めていく……というのを元々は重要視していたので、あんまりカタチを作っていくのが得意な方ではなかったんです。でも、このアニメに出演させてもらって、声色だったり、声の大小だったり、息遣いを決めていく、カタチを作っていくということからもアプローチ出来るようになりました」