「103万円の壁」福岡県と市町村で最大1577億円減収…知事「手取り増え人手不足解消の効果」理解も
福岡県の服部知事は25日の定例記者会見で、年収103万円を超えると所得税が課税される「103万円の壁」の見直しについて、178万円まで引き上げられた場合、県と市町村を合わせて最大で1577億円の減収になるとの試算を明らかにした。服部知事は引き上げについては「手取りが増えて、人手不足解消の効果もある」と理解を示しつつ、「国がしっかりと財政措置をとってほしい」と要望した。 【写真】服部知事
「103万円の壁」を巡っては自民、公明、国民民主の3党が引き上げについて合意。「国税」である所得税と同様に、「地方税」である住民税にも基礎控除(43万円)が設けられており、所得税と連動して住民税の基礎控除が引き上げられれば、地方の税収が減ることが指摘されている。
国民民主は103万円を178万円にすべきだと主張。これを受け、県は住民税の基礎控除を、差額の75万円引き上げた場合で試算した。
その結果、県単独では最大で467億円の減収となった。今年度の当初予算における県税収入は7424億円で、その6・3%にあたる。政令指定都市を含む60市町村では1110億円の減となり、2023年度の税収の決算額8766億円の12・7%に上るという。
服部知事は「物価も最低賃金も上昇する中で、税制が対応しきれていない。働き控えや人手不足を呼び起こしている」として、見直しは賛成とした。その上で、住民税の非課税世帯が増えて歳出が増える可能性にも言及し、「国が責任をもって補填を考えてほしい」と述べた。
福岡市の高島宗一郎市長もこの日の定例記者会見で、個人市民税が約400億円の減収になるとの試算を明らかにした。市税制課によると、23年度の市税全体の決算額は3699億円で、その約10%にあたる。
高島市長は「若い人の可処分所得が非常に低くなっている。真剣に動いてほしいというのは国民の声だ」とした上で、「地方に影響がないように実行してほしい」と注文した。
久留米市は、23年度の市税全体(決算額)の約1割にあたる50億円の減収を見込んでいる。ごみの収集と処理にかかる年間費用と同規模だといい、原口新五市長は「教育や福祉、災害復旧、広域医療など行政サービス全般にわたって支障が出る」と懸念を示した。北九州市でも、市税収入の約1割に相当する約200億円の減収が見込まれるという。