穏やかで豊かな老後生活を送ることはできる?資産運用しない高齢者を待ち受ける悲惨な未来
具体的には、2025年には経営者が70歳以上の中小企業が約245万社にまで増加し、そのうち127万社では後継者が決まっていないと試算されている。その結果、約650万人の雇用が失われ、GDP(国内総生産)は22兆円減ることになる(日本財団ジャーナル 労働力不足、医療人材不足、社会保障費の増大――間近に迫る「2025年問題」とは? 2023年5月24日)。 ■地政学リスク、インフレ…豊かで穏やかな老後は可能?
ただでさえも、医療サービスや介護サービスが十分に受けられなくなるかもしれない状況の中で、深刻な人材不足などが重なって、高齢者世代は自分たちの資産を使い果たして、貧困に直面する人が多くなるはずだ。 日本は、平均寿命こそ男女ともに世界トップクラスの長寿国だが、いわゆる健康寿命は我々が思っている以上に短い。男性で72.14歳、女性は74.79歳となっている。厚生労働省は2040年までにこの健康寿命をともに3年以上延ばそうとしているが、その実現は不透明だ。
最近、やたらと政府が1日に理想的な飲酒の量を提示したり、肥満や高血圧の弊害を訴えているのもそのためとも言える。とは言え、今や1人の若年層が2人の高齢者を支えるようなイメージが定着しつつあり、高齢世代の自立が問題となっている。 こんな状況の中で、もう一つ問題が増えてしまった。言うまでもなく、世界的なインフレの進行だ。この30年間、日本はデフレ経済だったために、収入がさほど増えなくても何とか生活していくことができた。そのために資産運用という概念がなく、タンス預金に等しい銀行預金に頼った老後生活を送ってきた高齢者が多い。
アメリカや他の先進国では、老後を生きるための重要なスキルとして、資産運用が用いられているのだが、日本では高齢者が資産運用に拒絶感を持つ傾向にある。こんな状況では、自分自身に何か起きたときに対応できないばかりではなく、日々の生活さえも、困窮を極めてしまうかもしれない。 すでに、日本人の多くは急激に進んだ円安のために、海外旅行も自由にできなくなった現実を認識している。円安の進行は、今後も止まる気配がなく、1ドル=163円というラインを超えてしまうと、プラザ合意前の1ドル=250円程度にまで一気に進行してしまうのではないかとさえ言われている。インフレが、今後も継続することは間違いないだろう。