「人の違いを面白がれない、そんな殺伐としたものになっちゃっていいのかな」――爆笑問題・太田光が憂う、笑いのガイドライン
太田は過去二回、大きな孤独を経験している。一つが、友人ができず3年間誰とも会話せずに卒業した高校時代。もう一つは芸能事務所独立直後。仕事がゼロになった。 「自分の思いを言えない、誰からも相手にされないっていうツラさも知ってるし、いくら漫才をやっても世に出れない、何の反応も返ってこないっていう経験もしてる。我々は笑ってほしいし、レスポンスがほしいわけですよ。常に」
その場で一番バカをやっていたいの
太田はいわゆる「ファミリー」を作らない。このクラスの芸人の中ではまれだ。一方で後輩芸人たちは、ある種ぞんざいなほど無遠慮にツッコんでいく。その壁のなさもまた特異だ。
「鬼越トマホークに言われたけれども『誰もお前のことを尊敬してねえからな』って(笑)。それは本当にありがたいですよ。先輩になってきちゃうとやっぱり尊敬されちゃうじゃない? そうするとボケにくくなっちゃうと思うんだよね。俺はボケたいだけの人だから、ツッコんでほしい。遠慮されるのが一番嫌なんですよ。だから楽屋から、ヒドいこと言ったり、エアガンで脅かしたりして(笑)、とにかくツッコんでくれって。その場の中で一番バカをやっていたいの」 最後に相方・田中裕二の評価を聞いてみた。 「仕事仲間としては、もう本当に低評価、0点です(笑)。一切成長しないし、うまくもならないし、全部、間違っている!」
太田光(おおた・ひかり)
1965年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部中退後、1988年に大学の同級生だった田中裕二と爆笑問題を結成。政治から芸能まで様々な社会現象を斬る漫才は、幅広い年齢層から支持を集めている。漫才師、タレントのほか、文筆家、映画監督など、様々な顔を持つ。
てれびのスキマ/戸部田 誠(とべた・まこと)
ライター。著書に『タモリ学』『1989年のテレビっ子』『笑福亭鶴瓶論』『全部やれ。』などがある。最新刊は『売れるには理由がある』。