「人の違いを面白がれない、そんな殺伐としたものになっちゃっていいのかな」――爆笑問題・太田光が憂う、笑いのガイドライン
イジメとお笑いは「地続き」
一見、「人を傷つけない」ような温かい笑いであっても、そこには必ず毒が含まれていると太田はみる。 「例えば、『はじめてのおつかい』で子どもが泣いたら、『あら、かわいいわね』って、まるで温かい笑いのようになっているけれども、子どもは本気で不安で泣いているわけでしょ? 子どもにとってはイジメなんですよ。だけど、そういうもんでしょ、笑いって。神戸の小学校の先生たちの激辛カレーを食べさせる動画だって、イジメられていた彼も『ああ、辛いの苦手です』って言いながら逃げ回っている。おそらく彼も笑っているんですよ、あのとき。自分の身を守るために笑っているんだと思うのね。だからこそ、イジメなんです。でもあれを知らずに見たときに、テレビのバラエティーのまねごとをしている、楽しそうって思う可能性も俺はあるって思うんだよ。人が困っているところってやっぱり面白くて、『ああ、そうそう。辛いとこうなるよね』という共感の笑いとイジメとで、それは分けられない」
「自分はじゃれているつもりで、周りは共感して笑っているけれども、相手はものすごく不快だったという状況も全然ある。だから、これはイジメ、これはプロのお笑いみたいなことというのは、分けられなくて地続きだと思う。『(相方の)田中がチビだ』ということには、バカにした笑いも含んでいるけど、人の違いを面白がるっていうものも、同じ笑いの中に入ってるんだよ。それをダメだと言われると、そんな殺伐としたものになっちゃっていいのかなとは思うよね」
イジっちゃいけない人っている
SNSの隆盛により、視聴者の反発はよりダイレクトに反映される。太田も数々の炎上の憂き目に遭ってきた。
「みんなが全員、好きな人っていて。国民的な人気者、そういうイジっちゃいけない人っているんですよ。浅田真央とか羽生結弦とか。羽生ゆずれない(現:あいきけんた)が炎上したりね。不運だったなとは思うけれども。この人をイジったら絶対駄目、というのっているんだよね」 炎上の原因は必ずしも一様ではないが、太田は傷つくことを恐れず、相手との対話を求める。それはなぜなのか。 「俺自身が誰かにかみつくこともあるわけで、そのときに、無視されるのが一番嫌なんですよ。悪口でも何でも、返されたほうが全然いい」