「元警視総監が経営陣って露骨すぎない?」トラブル続出の電動キックボード、大手Luupの「ロビー活動」にネットがざわつく理由
元警視総監の「手腕」
この発表に対し、ネットでとりわけスポットライトを当てられた人物――それが樋口建史氏だ。業界紙記者はこう話す。 「樋口氏といえば、2011年8月に警視総監に就任していますが、そのキャリアの後押しとなったのが、2003年11月に北海道新聞のスクープという形で発覚した、いわゆる『北海道警裏金事件』を収束させた“手腕”によるものです。 北海道警察旭川中央警察署が不正経理を行っていたことから端を発したこの事件。次々に組織的裏金づくりの実態が暴かれるなか、“火消し役”として警察庁刑事局刑事企画課長から道警本部長として2005年にやって来たのが樋口氏でした。 それまで疑惑追求の先鋒にいた北海道新聞ですが、道警は同社の上層部に対して捜査権を駆使するなどし、2006年には『記事の書き方や見出し、裏付け要素に不十分な点があった』とする社告を出させるなどし、一種の“手打ち”へと持っていきます。以降、マスコミによる事件の報道は自然と収束に向かいました。 そんな経歴ゆえに、ネット住民、特に《陰謀論》に傾倒する人たちは、樋口氏に対して『天下りさせることで警察を抑え込むつもりだ』『意図的に電動キックボードの炎上を鎮静化させようとしている』とうそぶいている印象です」
焦点は事故を減らせるかどうか
また、樋口氏はこれまでに内閣府カジノ管理委員会委員やUber Japanシニア・アドバイザーなどを歴任している。IR(カジノを含む統合型リゾート)やライドシェアといった法整備が求められる業界に関わってきたことから、「ロビー活動」を強く意識させる人物として、ある種の拒否反応を抱かれているのかもしれない。 ただ、電動キックボードの関係者サイドからは、今回のLuup社の新体制発足は概ね好意的に受け入れられているという。前出の記者が続ける。 「電動キックボードの安全対策の強化が急務であることはLuup社も十分に理解しています。そのためには引き続き、法規変更や認可に腰の重い警察庁や国交省とのやり取りを、できる限りスムーズにしたいはず。樋口氏を迎え入れたのも、それだけ同社がマイクロモビリティに真摯に向き合っている証拠と言えます」 ちなみに樋口氏の息子は、現千代田区長の樋口高顕氏。同区は、Luupが初めて政府公認で公道走行による実証実験を行った場所でもある。電動キックボードの事故は、都道府県別で見ると東京が7割と群を抜いている。そのため、Luupと東京の自治体との関係強化は、事故の発生件数を減らすことにもつながるかもしれない。 「警察での35年の経験を活かし、Luupが提供する移動インフラの安全性向上に貢献してまいります」と述べた樋口氏。その手腕があらためて試されている。 【こちらも読む】『衝撃! 中国ではなぜ、「配達ドライバー」が続々と死んでいるのか』
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