ピンチの芽をつんだ攻撃的3バック 出場国が増えたW杯本番でも生きるはずだ【サッカー日本代表】
【大塚浩雄のC級蹴球講座】 ◇11日 サッカーW杯北中米大会アジア2次予選B組最終戦 日本―シリア(エディオンピースウイング広島) 前半、日本代表の森保一監督(55)はこのシリーズベストのメンバーで3―4―2―1システムを組んできた。ミャンマー戦でも試したシステムで「攻撃的3バック」といわれているが、要は攻めているときのリスクマネジメントができるかどうかが鍵だ。 アジア・カップで惨敗し、大きな課題を突きつけられた日本代表。守りを固められ、縦のロングパス、ロングクロス、アーリークロスで攻められると、もろさを見せた。ミスでボールを失ったとき、相手が思い切ってプレスをかけてきてボールを失ったとき、相手の手数をかけないカウンター攻撃をいかに受け止めるか。前半の冨安、板倉、町田の3バック、遠藤、田中碧のダブルボランチ、そして堂安、中村のサイドアタッカー。この7人が見せたリスクマネジメントはほぼ完璧に機能した。
3バックは高さもあって、対人プレーも強い。ロングボール、アーリークロスをことごとくはね返し、ダブルボランチとの5人でゴール正面のスペースをガッチリと固めた。さらに、相手がポゼッションしてワイドに攻めてくると、両サイドアタッカーもDFラインに加わり、5―4―1のブロックを形成して相手に攻めるスキを与えない。前線の3人も連動してプレスをかけ続け、そしてボールを奪ったら久保、南野、上田のアタッカー3人にボールを供給し、得点を重ねた。絶えず数的有利な状態をつくり、相手にスペースを与えない。前半、攻め込まれたシーンは2度ほどだったが、決定的なピンチではなかった。 後半は伊藤を入れて4バックに切り替え、これまでも多用してきた4―1―4―1システムで戦った。試合中にいかにしてスムーズにシステムを組み替えられるか。多くの選手を起用し、システムの使い分けまで試すことができた。 シリアはスタメンの内6人がアルゼンチン出身の選手。個々の強度という面では、ミャンマーよりも歯応えがあるチームだ。それでも、いろいろと試しながら、5―0の勝利。多彩なコンビネーションで、多くのチャンスを作った。 すでに最終予選進出を決め、消化試合となった2試合だった。森保監督はこれまでと同様に、欧州組を軸にこれまで戦ってきたメンバーを招集した。選手を休ませればいいのに、新しい選手を試せばいいのに…という声もあったが、代表として活動する機会は限られている。欧州で戦い終えた選手のケアをしながら戦術の確認、積み上げを行う強化合宿ととらえれば最高のトレーニングキャンプとなった。 この戦いができれば、最終予選でアジア・カップと同じ轍(てつ)を踏むことはないだろう。こういうい戦い方ができるということを見せておけば、相手もさらに考えなければならない。 この3バックは最終予選でも威力を発揮するだろうが、出場国が48に増え、守りを固めてくる格下の国が増えるW杯本番でも生きるはずだ。まずは9月からの最終予選だが、この2試合は大いに意味のある消化試合となった。 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)
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