【独占手記】「ゾッとしたけど面白かった」金谷拓実、卒業文集で「賞金王獲得」を予言していた
◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー メジャー最終戦 日本シリーズJTカップ 最終日(1日、東京よみうりCC=7002ヤード、パー70) 賞金王に輝いた金谷拓実が、スポーツ報知に独占手記を寄せた。今季(賞金王以外の主要)5部門のスタッツで1位を獲得するなど、内容と結果が伴ったシーズンの舞台裏をつづった。 最終戦で逆転して賞金王を取ることができた。とにかく今週は自分らしいプレーをして取りたいと思っていた。広島出身の選手で初となったが、(通算30勝の)倉本昌弘さんや偉大な方たちも届かなかったタイトルを取ることができて本当にうれしい。先輩方が道を切り開いてくれたと思っているので感謝している。 昨年、実家に帰った時に子供の頃の卒業文集を見ていたら「賞金王」と書いていた。(出場はかなわなかったが)「パリ五輪」とかも書いていて、具体的だなってゾッとしたけど面白かった。目標を立てて練習して、向き合っていくのは好きだった。毎日努力し続けるのがモットーだから。今季(賞金王以外の主要)5部門のスタッツで1位になれたのもうれしい。 これまで賞金王は通過点という気持ちがすごくあった。20―21年が2位、23年が3位で届かず、だんだん賞金王の重みを感じ始めていた。今年はどこをというわけではなく全体的にレベルアップを図ってきたが、夏場にパッティングの調子が良くなく、自分を見つめ直した。 とくにKBCオーガスタ(29位)、フジサンケイクラシック(16位)の2試合は自分のプレーができず、しんどかった。空いた1週間もガレス・ジョーンズ・コーチ(豪州、ナショナルチーム時代からの恩師)と練習をした。「Be Patient」(我慢しよう)と声を掛けてもらって。苦しい時期も復調するために、パターの構え、フェースの向きなど基礎をちゃんとできるようにやった。練習しないとプロとしてずっと生き残ることはできないと改めて感じたのは良い経験だった。バンテリン東海クラシック(9月)で2位。もちろん悔しかったけど、100%でできた。徐々に自信を取り戻し、翌週に2勝目ができた。 夏場は平田選手と差があり、賞金王のことは考えていなかったが、我慢強くやり続ければチャンスは出てくると思っていた。予選落ちしたセガサミーカップ(7月)など良くない試合も、どの一打も同じ熱量でやった。そこは自分のプライド。昔からそういう選手が好きだった。きれいにプレーする選手もいれば、泥臭い選手もいる。野球でもベースに滑り込むとか、ガッツある選手が好き。広島の緒方孝市さん(元外野手)とか、渋いでしょ。 2年前に海外を転戦したが、その時は実力や結果を出すための準備も足りなかったと感じた。またそういうチャンスをつかみたい。ヘッドスピードを上げるために振る器具を使った練習も、ずっと続けている。20年にプロになり、プロ初優勝(同年ダンロップフェニックス)も無観客だった。今はファンの方の応援で自分の力以上のものが出せたりする。手を上げて歓声に応えるのは、感謝の気持ちが伝わってほしいから。ライオネル・キャディーやトレーナーの大坂武史先生、1年間一緒に戦ってくれて本当に感謝の気持ちしかない。支えていただいた皆さんに、ありがとうを伝えたい。 (プロゴルファー・金谷 拓実) ◆金谷の主な記録 ▽広島県出身者初の賞金王 73年のツアー制施行後では81&85年の倉本昌弘(通算30勝)、06&16年谷原秀人(通算19勝)、20―21年の金谷の賞金ランク2位が最高だった。第51代目(24人目)の賞金王で、13府県目の戴冠者となった。 ▽ツアー歴代7番目の年少賞金王 26歳6か月は、73年の尾崎将司(26歳10か月)を上回る7位(日本人5番目)となった。
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