アルバイトと二刀流の選手多数 高知ユナイテッドが初J3昇格「子供たちの未来変わった」…県勢初Jリーグ参入
◆J3・JFL入れ替え戦▽第2戦 YS横浜0―2高知ユナイテッド(7日・ニッパツ) J3・JFL入れ替え戦は7日、ニッパツ三ツ沢球技場で第2戦が行われ、日本フットボールリーグ(JFL)2位の高知ユナイテッドが初のJ3昇格を決めた。J3で19位のYS横浜に前半7分、FW新谷聖基(26)が先制弾を決めると、後半アディショナルタイム1分にも追加点を挙げ、2―0で勝利。2戦合計3―1となり、高知県勢初のJリーグ参入を果たした。14年からJ3で戦ってきたYS横浜は来季、JFLに降格する。 土佐の地に初のJチームが誕生した。試合終了の笛が鳴ると、高知の選手たちは涙を流しながらピッチに倒れ込み、歓喜した。吉本岳史監督(46)は「皆が泣くので、僕は泣けなかった」と笑ったが「最初に歴史に名を残したチームになった。最強ではないが、最高のチームになった」と声を弾ませた。 高知は高校野球の名門・明徳義塾を筆頭に野球が盛んで、ニュースも野球が主に取り上げられ、サッカーが報道されることは少ない。 経営面で苦労し、2016年の発足後、初期は給料の支払いが遅れることもあった。現在も多くの選手が、アルバイトで生計を立てている。しかし、地域の活動で地道に発信を続け、裾野を広げてきた。クラブ発足時から在籍するMF横竹翔も「今日の結果で(高知の)子供たちの未来も変わった」と期待に胸を躍らせた。 高知県中村市(現・四万十市)出身の指揮官は「(高知に戻ってすぐに)カツオを食べたいですね」と冗談を飛ばしながら「この炎を絶やさないように、また盛り上がっていきたい」と力を込めた。高知にJ参入という“夜明け”が、ついに訪れた。(浅岡 諒祐) 〇…前半7分に右サイドのクロスに頭で合わせて先制弾を決めた新谷は「いいボールだったので、合わせるだけでした」と頬を緩めた。多くの選手と同様、新谷も21年に京都先端科学大から加入して以降、地元のホームセンターで主に品出しのアルバイトをしている。職場にはチームのポスターを貼ってもらうなど、日頃から応援されているといい、「(J3昇格を)目標にずっとサッカーをしてきた。一つ目標がかなった」と喜びを見せた。 ◆Jリーグ60クラブと47都道府県 JFL高知が県勢初となる来季のJ3昇格を決めて、四国地方の全4県にJクラブが誕生したことになった。これでJリーグ未参入の地は滋賀、和歌山、福井、三重、島根の5県。今季J3の岩手はリーグ最下位の20位で、来季のJFL降格が決まっている。 ◆高知ユナイテッドSC 2016年に社会人チームのアイゴッソ高知と高知UトラスターFCが統合して発足。19年に四国リーグを制し、20年にJFLへ昇格した。クラブカラーは赤と緑。ホームタウンは高知市を中心に全県。エンブレムには土佐のカツオを中心に、黒潮の荒波、よさこい祭りの鳴子板、闘犬で有名な土佐犬の横綱の化粧まわしと、高知県をイメージさせるものが描かれている。
報知新聞社