関塚元五輪代表監督でジェフユナイテッド千葉は変わったか?
ジュニアユース監督時代を含めれば、チョウ貴裁(チョウ・キジェ)監督がチームに携わって10年目となるベルマーレからは、「継続は力なり」という格言を屈辱的な大量失点とともに教えられた。だからこそ、約4か月ぶりとなった再戦で、あらためて感じたことがあった。「やることが徹底されていて、全員が迷いなくやっている印象を受ける。相手にとっては、それがどうしても脅威に感じてしまう。そこは見習うべきことだと思う」。 山口がピッチの上で感じた本音を率直に打ち明ければ、前半戦は解説者としてベルマーレの戦いを見てきた関塚監督もこう続けた。「統率感と自分たちが求めているものを90分間の最後までやり通すことは、チョウ監督以下と選手、クラブがひとつになって戦っているなと感じました」。 昨シーズンの経営情報を見れば、ジェフの人件費は約9億9400万円で、ガンバ、ヴィッセル神戸と並んでJ2では突出していた。当期純利益は約9700万円、純資産は約5億4000万円を計上した。経営的には十分に及第点を与えられるが、サポーターやファンが望むJ1復帰は果たせなかった。 J2戦線でワン・ツーフィニッシュしたガンバとヴィッセルの差はどこにあるのか。J1昇格プレーオフ準決勝で、最終的に四国勢初のJ1昇格を勝ち取った徳島ヴォルティスの牙城を崩せなかった理由はどこにあるのか。選手、首脳陣、フロント、そして親会社を含めた組織全体に「甘さ」があったからに他ならない。 千葉県出身の関塚監督とは2012年オフにも交渉が進みながら、最終的に破談となった経緯がある。フロント側はジェフ再建への切り札としたい意向を描いていて、7月3日の新監督就任会見の席で島田亮社長は「厳しい状況の中で火中の栗を拾ってくれて嬉しい」とコメントしている。 もっとも、これで「新監督に任せた」となれば、オシム氏時代の成功体験にすがってきた悪しき歴史が繰り返されるだけだ。この先にチームがつまづく事態に直面すれば、指揮官を代えれば何とかなると安易に考えてきたフロントの無責任体質が再び表面化するだろう。 山口は自戒の念を込めてこうも語っている。「僕らは結果を出すことにフォーカスしていかないといけない。監督が代わってすべてが上手くいく、ということではないですし、いままでできなかった責任が僕たちにはある。その意味では、全員がもっとシビアになっていかないと」。 開幕前の下馬評では十分な戦力と毎年のように評価されながら、恵まれすぎた環境の中でJ1復帰という結果を残せなかった選手たちの間に「もう失敗は許されない」という危機感と不退転の覚悟が芽生えつつあることが、関塚新体制になって1か月を迎えるジェフに生じている最大の変化と言えるかもしれない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)