高齢者住宅へ移った母の家が空家に…「3年以内」に自宅を売った〈55歳長女〉、最終的に姉妹2人でニンマリできたワケ【相続の専門家が解説】
決断して半年で売却できた
志穂さんの母親は80代半ばで、まだ元気だとはいいつつも、要介護1の認定を受けており、一人暮らしでは買い物や料理のサポートが必要になっています。高齢者住宅に移ったことでそうした日常生活のサポートはしてもらえるようになったそうなのですが、最近では、不動産やお金という財産についても自分で管理するのが大変になってきたそうです。 志穂さんが母と妹に、高齢者住宅に住み替えてから3年以内に、自宅として住んでいた母親自身が売却することがいいと説明をしたところ、二人とも内容を理解し、所有者である母親は売却したいと決断されたそうです。 売却後、すぐに購入希望の法人があり、契約が進みました。母親の自宅は65坪あり、建売会社が買い取り、2棟の建売住宅にするということでした。
測量も解体も、買主が負担する有利な売り方で進められた
自宅は築年数が50年ほど経過していますので、売却するには解体して更地にすることが一般的ですが、買主の合意が得られると、現状のまま、引き渡すことも可能です。中の荷物は処分業者さんに見積をしてもらい、がらんどうにするのですが、建物はそのままで引き渡します。解体費を差し引いた売買価格になることもありますが、解体にかかる日数や立ち合いの手間などが省けるため、得策だと言えます。 測量は売主負担ですることが原則で、隣地との境界確認を済ませ、越境の問題などもないところで買主に引き渡すのが一般的です。 志穂さんの母親の家は隣地からの越境もありましたが、そうした課題も含めて買主が引き受け、測量も購入後に買主が行うことで契約が進められました。
長年住んできた家が想定以上の額で売れ、これからの資産に
所有者の母親が自宅を売却する当事者ですので、契約には立会い、サインをして、スタートしましたが、残金決済の時には母親の委任を受けて、志穂さんが代理で手続きを済ませるようにしました。事前に司法書士が母親と会い、売却の意思確認を済ませていましたので、事務的なことは委任を受けた志穂さんが担当したということです。 長年住み慣れた家は売却してなくなりましたが、亡くなった父親と母親が苦労して購入し、長年住んで残してきた家がお金になりました。購入した50年以上前の価格の数倍以上となり、思った以上の価格で売れたと母親は大変喜んでいました。 これからの老後、100歳までの時代だと考えても、高齢者住宅の費用がかかることから、お金の不安がなくなって、とにかくよかったと志穂さん姉妹も安堵したということです。思い立った時に相談に来て頂き、半年で売却までできたことでこちらもほっとしています。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子
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