セルビア代表での3年間の集大成、EURO2024で得た貴重な経験。驚かされたキミッヒ、ククレジャ、ヤマルらのデータとは?【喜熨斗勝史の欧州戦記】
楽しみな若い選手たちの変化
ごまかしの効かない世界で、欧州サッカー界は日々進歩しています。私が今回、新たにセルビア代表コーチとしての一歩を踏み出そうと思ったのも、そこがひとつの理由です。 ふたつの大きなコンペティションを終えたことで、血の入れ替えを行なっていかないといけない時期。今回のネーションズリーグはハイレベルなAグループで戦うことができるのですが、9月の活動では主将のMFドゥシャン・タディッチ(フェネルバチェ)やMFネマニャ・グデリ(セビージャ)、MFフィリップ・コスティッチ(フェネルバチェ)らを招集しませんでした。 18歳のDFコスタ・ネデリコヴィッチ(アストン・ビラ)ら若手を招集して、スペイン代表とデンマーク代表と2連戦。若く、新しい選手たちを起用しながらスイス代表を含めた強豪国との計6試合でどう成長していくのか見極め、国として対等に渡り合っていけるようにできるのかにトライしたい気持ちが大きかったです。 事実、私のメーンパートである守備面はEURO2024でも一定の成果が上げられ、DFニコラ・ミレンコヴィッチはフィオレンティーナからノッティンガム・フォレストへ、DFストラヒニャ・パヴロヴィッチはザルツブルクからACミランへとステップアップを果たしました。彼らがトップクラブから認められたのは一指導者として嬉しいですし、今後、若い選手たちが厳しい戦いを経て、どう変化していくのかは楽しみです。 またセルビア代表のコーチとしてEURO2024の最終戦デンマーク戦前にミスター(ドラガン・ストイコビッチ監督)と話し「守備をしっかりしていきましょう」と進言させてもらいました。ミスターも受け入れてくれて、スペイン戦での無失点に繋がった面もあります。我々も成長しています(笑)。 最後に。今回はナショナルチームでもクラブでも大きな改革がありました。欧州ネーションズリーグAグループは従来、各組1位だけが決勝トーナメントに進出して、ノックアウト形式で優勝を争っていたのですが各組1、2位が勝ち上がり、準々決勝を戦います。3位は1カテゴリー下のBグループの2位チームと入れ替え戦。つまり消化試合が少なくなり、より厳しい戦いの連続になります。1分1敗スタートの我々にとっては来月の本拠地スイス戦、敵地スペイン戦は非常に重要な2連戦になります。 32チームから36チームに参加数が拡大された欧州CLも、1次リーグは異なる8チームとホーム&アウェー方式で計8試合。成績上位8チームが決勝トーナメントに進出し、9位~24位はプレーオフで残る8枠を争うことになりました。 選手の負担は大きくなるかも知れないですが、UEFAは収益金UPとともにクラブ強化、選手や指導者育成につながると声明を出しています。こちらも最後までスリリングな戦いが続くので、より研ぎ澄まされた練習、より研ぎ澄まされた戦術を落とし込んでいかなきゃいけなくなるのは明白です。 では良いニュースを届けられるように、来月も頑張ってきます! ――◆――◆―― PROFILE 喜熨斗勝史 きのし・かつひと/1964年10月6日生まれ、東京都出身。日本体育大卒業後に教員を経て、東京大学大学院に入学した勤勉家。プロキャリアはないが関東社会人リーグでプレーした経験がある。東京都高体連の地区選抜のコーチや監督を歴任したのち、1995年にベルマーレ平塚でプロの指導者キャリアをスタート。その後は様々なクラブでコーチやフィジカルコーチを歴任し、2004年からは三浦知良とパーソナルトレーナー契約を結んだ。08年に名古屋のフィジカルコーチに就任。ストイコビッチ監督の右腕として10年にはクラブ初のリーグ優勝に貢献した。その後は“ピクシー”が広州富力(中国)の指揮官に就任した15年夏には、ヘッドコーチとして入閣するなど、計11年半ほどストイコビッチ監督を支え続けている。 指導歴 95年6月~96年:平塚ユースフィジカルコーチ 97年~99年:平塚フィジカルコーチ 99年~02年:C大阪フィジカルコーチ 02年:浦和フィジカルコーチ 03年:大宮フィジカルコーチ 04年:尚美学園大ヘッドコーチ/東京YMCA社会体育保育専門学校監督/三浦知良パーソナルコーチ 05年:横浜FCコーチ 06年~08年:横浜FCフィジカルコーチ(チーフフィジカルディレクター) 08年~14年:名古屋フィジカルコーチ 14年~15年8月:名古屋コーチ 15年8月~:広州富力トップチームコーチ兼ユースアカデミーテクニカルディレクター 19年11月~12月:広州富力トップチーム監督代行 21年3月~: セルビア代表アシスタントコーチ
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