23歳ながら大ベテランの風格。注目のフジテレビ新人アナ・上垣皓太朗を直撃! 趣味は俳句、好きな街は河田町、好きな音楽は昭和歌謡......。
■複合語のアクセントが気になって仕方ない ――言葉好きということもあってアナウンサーを目指したんでしょうか? 上垣 話すことも言葉自体も好きだったので、なんとなくアナウンサーは受けなきゃいけないと思っていましたね。教員やラジオ局員、新聞記者も興味はあったのですが、無事内定をいただいたのでテレビの道へ飛び込みました。 ――アナウンサーの仕事はどうですか? 上垣 毎日楽しすぎてあっという間です。人に恵まれて、伸び伸びやらせてもらえています。メリハリのある仕事なので、本番とそれ以外が、サウナと水風呂みたいな感じですね。ワーッと興奮して、サッと落ち着いて、休憩時間にホッとする。ずっと整ってる感覚です。 ――落ち込むことはないんですか? 上垣 いっぱいありますよ! 散歩中に「あの言い回し、違ったかな」とかひとり反省会をしています。準備も好きですが、振り返りはもっと好き。落ち込んだり引きずったりすることはないけれど、グチグチ考えたい性格です。 ――言葉でこだわっている部分は? 上垣 正しくきれいな日本語には一番こだわりたいですね。FNN(フジのニュースネットワーク)統一用語集を読むのが好きなんです。 例えば、河川敷は「かせんしき」なのか「かせんじき」なのか。ふたつとも正しい読み方ですが、フジテレビとしては「かせんしき」を採用すると示している。これが楽しくて楽しくて、ずっと読んでます。文学部の同期に伝えたら「その本でお酒が飲めるな」って盛り上がりました。 ――すごいツマミだ。 上垣 言語好きにはいろんな流派がありますが、私は言葉の音声面が好きで、アクセントやイントネーションに興味があります。 ――例えば? 上垣 (食い気味で)複合語のアクセントの変化とか。もともと「国家」の「戦略」の「特区」だったものが、「国家戦略」の「特区」になって、「国家戦略特区」と連結されると、アクセントの位置がそれぞれ異なりますよね。複合語のアクセントは変化するわけです。 最近だと「ウクライナ侵攻」は「ラ」にアクセントがあったのに、徐々に平板化しましたよね。言われ慣れていくとアクセントは消えていくことが多いんですが、その変化のタイミングがいつなのか気になっています。 ――言葉の話になるとトークのギアが上がりますね。 上垣 ずっと話せますね。こんな話も、アナウンサーになると仕事として大真面目に考えられる。最高の職業です。 大先輩の奥寺健アナウンサー(93年入社。『Live News it! Weekend』などを担当)も同じ趣味嗜好なので、よく談議しています。奥寺アナは音に関して専門家並みに詳しくて、ニュース原稿はすべて楽譜にできるそうです。 ――アナウンス室で盛り上がっているんですか。 上垣 はい。皆が皆そうというわけではないですが、それぞれ自分なりの方向でアナウンサーという仕事にこだわりを持っていて、尊敬します。 ――天職ですね。 上垣 アナウンサーになれて良かったです。ところで今日はこんな地味でマニアックな話で大丈夫ですか......? ――もちろんです! いつか上垣アナ司会のマニアックな番組が見たいですね。 上垣 地形図やアクセントの番組ですか? それは最高ですね。面白いだろうなぁ。実現できるように頑張ります。 取材・文/井澤 梓 撮影/榊 智朗