「水俣物語」過去と現在を対比した写真集…お下げ髪たたえていた女性の頭には転倒に備えるヘッドギア
11月20日に出した「水俣物語」は、「水俣を見た7人の写真家たち」(共著)、「水俣よサヨウナラ、コンニチワ」に続く3冊目の水俣の写真集で、2万カット以上から251点を厳選した。タイトルは、敬愛する小津安二郎監督の映画「東京物語」にちなむもので、受難者たち▽胎児性・小児性水俣病▽子供たち▽海と地――の4章で構成した。
水俣病が公式確認されるきっかけとなった姉妹の一人で、田中実子さん(71)は、見開きで「過去と現在」の姿が対比されている。40年前にはお下げの髪をたたえていた頭部は、今や転倒に備えるためのヘッドギアで覆われている。時の経過では決して解決しない公害病の現実を伝えている。
「水俣のような環境破壊は取り返しがつかない。大切なことは、静かな日常だ――」。だからこそ、普通の暮らしを撮り続けよう、と考えている。
◆プロフィル=1948年、大阪府生まれ。水俣病に関わる契機は71年に開かれたチッソの株主総会を撮ったこと。スミスとは半年ほど撮影時期が重なり、被写体に向き合う姿勢を学んだ。「1枚の写真が映像を超える」と信じている。「水俣物語」は税込み3300円。