14世紀欧州の「ファッション革命」とは、体を包む布が体の形になった現代メンズ服の原点
ファスト・ファッションにまで至る約700年の歴史、女性の服にも影響
14世紀、戦争とペストの大流行で荒廃したヨーロッパで、男性のファッションに革命が巻き起こった。それまでの服は、たっぷりとした布で体を包むだけだったが、この時代に、体の線を見せる細いボディコンシャスなスタイルが登場。ヨーロッパ上流社会のファッションは劇的な変化を遂げた。多くの歴史家たちが、西洋の現代のファッションはこのとき生まれたと考えている。 ギャラリー:14世紀欧州の「ファッション革命」とは、現代メンズ服の原点 画像5点 貴族の男性や裕福な商人たちは、ダブレットと呼ばれる体にぴったりフィットした短い上着や、明るい色のウールのタイツ、飾りひもの付いたフードなどを身に着け、以前はローブで隠していた足を見せるようになった。また、つま先が極端に長く尖った、プーレーヌと呼ばれる凝ったデザインの革靴が大流行した。
「オーダーメイド」の誕生
服の構造の進歩は、変わりゆく服飾業界において重要な役割を果たした。それ以前の衣服は、大きな四角形の布を織る道具で作られ、豊かなドレープを出すことはできたが、体の線に合わせて仕立てるというようなものではなかった。 しかし14世紀、裕福な男性たちの服が、体に合わせて小さなパーツに切った布を縫い合わせて作られるようになり、おかげで様々な構造やデザインの服を仕立てられるようになった。 「その人の体に合わせたオーダーメイドの服というそれまでにない新しい概念は、服と着る人との間に新たな関係が生まれたことを意味します」と話すのは、米フォーダム大学の中世学センターで服飾史を研究するローレル・A・ウィルソン氏だ。 転換期になったのは1330年代だとウィルソン氏は指摘する。この時代は、様々な社会的、経済的要因によって、ファッションが再定義された10年だった。 台頭する商人階級が社会的評価を求めるようになり、その上の貴族階級は、自らを他の貴族と区別し、さらには下の身分でありながら裕福になっていく商人たちとも区別するために、地位の細分化を図っていた。こうした階級闘争は服装にも表れ、仕立服の需要が増し、身分の低い人々にとってオーダーメイドの服は手の届かない存在になっていった。