トランプ次期政権「民主主義の危機」で思い出すオバマ元大統領の演説
確かに、トランプ氏は「中国からの輸入品には一律60%の関税をかける」と宣言している。米国最優先、極端な保護主義を打ち出すと見られている。そうなれば、中国は米国に報復関税をかける。貿易戦争になる。どちらも疲弊するかもしれない。 しかし、一方で、その米国最優先、自国第一主義という、トランプ流の手法を、中国、そしてロシアは「今こそチャンスだ」「好機到来」と感じているような気がする。 中国にロシア、イランに北朝鮮。これらの国々が結びあって、米国主導で築かれてきた世界秩序を崩そうとしている。その一環として、中国とロシアは中心になって地域協力組織「上海協力機構」という枠組みをつくっているが、昨年、ここにイランが加盟した。 もう一つの中ロが主導する国際組織に、主要新興国のグループ「BRICS」がある。こちらにも今年1月末、イランなどの新規加盟が決まり、加盟国は5か国から9か国になった。日米を含む先進7か国(G7)に対抗する姿勢を明確にし、自らの影響力を強めようという動きだ。米国流の価値観、米国流の民主主義という価値観を受け入れない、または一線を画する国々だ。 一方、米国自身が自らの価値観を軽んじて、国内で分断が進み内向きになる。そして、米国と価値観を共にしてきた国々との間でも、安全保障や経済でトランプ流の取引(=deal)によって損得勘定が優先されれば、米国は求心力を失う。秩序を守るための規範(=モデル)を損なえば、中国やロシアといった国々の、思惑どおり、都合がよくなってしまう。 ■“皇帝タイプ”が覇を競う世界に? 民主主義を劣化させる異なる意見の排除、ウソ、扇動、ルール無視…。どれもトランプ氏の過去の行動から思い浮かぶ。 多様性の反対にある差別。「移民がペットを食べている」というデマ、そのデマは訂正されるどころか、拡散していく。強弁による扇動。社会を構築する上で不可欠なルールや秩序の否定…。民主主義の旗手であるはずの米国で、そんなことがまかり通っている。