【復興事業見直し】国は重い責任自覚を(11月22日)
国の施策を検証する行政事業レビューで、復興支援事業の見直しを求める意見が取りまとめられたのを受け、県内の首長や議員から反発の声が上がっている。予算規模の縮小や事業対象の制限は復興を停滞させる恐れがある。不安や不満を持つのは当然だ。国は原子力災害に対する社会的責任の重さを改めて自覚し、復興が完了するまで最大限に努力する姿勢を貫くべきだ。 レビューでは、東京電力福島第1原発事故の被災地を支援する福島再生加速化交付金が議題に上がった。生活拠点の整備や農林水産業の再開などに活用できる制度だが、復興が一定程度進んだとして実質的に全額負担している補助内容を検討するよう指摘した。復興の進ちょくは避難指示解除の時期によって異なり、新たな課題に直面している地域は少なくない。交付金の必要性は依然として高く、さらなる拡充を求める声すら出ているのが現状だ。 加速化交付金とともに議論された自立・帰還支援雇用創出企業立地補助事業基金は働く場の確保などを目的とするが、避難指示解除後10年を一つの目安に終了時期を設けるよう提案した。被災住民の医療費などの減免措置期間に準じるべきとしているが、原発事故の被災状況や経済事情などを考慮せず、期間を一律にする考え方には疑問を抱かざるを得ない。
レビューの議論では、復興庁の設置期限である2030年度末を区切りに、事業を整理するかのような発言が相次いだ。ただ、現地では原発の廃炉をはじめ、中間貯蔵施設に収容された除染土壌の県外最終処分、帰還困難区域の避難指示解除、福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)の整備など重要課題が山積している。中長期的な取り組みが欠かせず、2031年度以降の復興の方向性を見据えた検討が求められる。 伊藤忠彦復興相は「福島の復興が完了するまで並走する」とし、2031年度以降については県と相談、調整していく考えを示す。内堀雅雄知事は「全県的な問題が継続している以上、財源は確保しなくてはならない。国と対峙[たいじ]しながら訴えていく」と強調している。県と市町村、県民が一丸となり、国に最後まで責任を持つよう働きかける必要がある。(角田守良)