虎のソナタ 虎・代打の神様たちは「ポジティブ思考」 代打の難しさ語る渡辺…〝神の領域〟参考に
渡辺諒の契約更改の取材を担当したのは、デスク・阿部祐亮だった。 日々、過酷な勤務が続くトラ番記者も、サンケイスポーツに所属する会社員。当然、休みが必要。労働基準法にしっかり定められている。そうなると、人手が足りない。忙しいデスクが、合間を縫って現場に出向くことになる。 【写真】打球を追ってカメラ席に落ちる阪神・渡辺諒 「渡辺選手を取材したのは初めてでした。取材が終わると、自分が座っていたイスを元の場所に戻していました。こういうのって、意外にできない人が多いですよね」 直球破壊王子の第一印象は極めて良かったらしい。 その渡辺が口にしたのは代打の難しさだった。 「代打で凡退したら、次にいつ、使ってもらえるか、分からないですから。少しでもスタメンで使ってもらえる機会を増やせれば…」 阿部は自分の仕事に置き換えた。今、自分はトラ番の代打として球団事務所に来ている。冒頭にも書いたが、渡辺とは初対面だ。それでも、会社は結果を求めてくる。 「いきなり、代打でやってきて、ニュースなんて書けませんからねぇ。会社から結果を出せといわれても、きついです。一緒にしたら叱られますが、渡辺にしても、原口にしても、阪神の代打陣はホント、よく頑張ってます。阪神ファンは、誰も文句を言わないでしょう」 妙な例えだが、何となく「代打」の大変さは伝わる。 阪神には、時代を彩る「代打の神様」がいた。平成の時代に君臨したのは八木裕(日本ハム打撃コーチ)と桧山進次郎(野球解説者)。あれは2008年。サンスポ紙面上で現役だった桧山氏と、サンケイスポーツ評論家だった八木氏の新旧「代打の神様対談」を企画した。 対談の最中に、合間に、2人が共通して話していたのが「ポジティブ思考」だったと記憶している。 八木 「悪かったことは覚えていない。いいことだけ覚えている。『失敗したことを忘れず、悔しさを次へ生かす』という人がいるけど、僕はそうは思わない。プラスに考えるほうが、絶対に結果につながる」 桧山 「いいことしか覚えていない。いい場面で1本打ったら、『この先、1カ月ぐらい打てなくてもいい』と思ってます。そんなふうに考えていないと、ほとんどが失敗の連続なので、毎日生活ができない」