カラス撃退に緑色レーザー 島根のメーカー開発 酪農家「効果続き乳量増」
畜産現場で「カラス撃退レーザー」が効果を発揮している。カラスが苦手とされる緑色のレーザー光を、形や大きさなどが異なる14パターンで、方向も変えながら照射する。導入する酪農家からは「効果の持続性は高い。牛のストレスが軽減され、乳量増につながった」との声が上がる。 【動画】緑色レーザーでカラスを撃退 農水省によると、2022年度のカラスによる農業被害は13億4300万円で、鳥類全体の5割を占める。畜産では、牛の乳房や背中を突いたりする他、家畜伝染病のウイルスを農場に持ち込む存在としても指摘される。 カラス撃退レーザーは、山陰パナソニック(島根県出雲市)が、県内外の畜産農家への聞き取り調査を行い、音楽ライブで使われるレーザー機器を製造する東京のメーカーと共同開発した。 レーザーの色は、カラスが攻撃されていると認識するという緑を採用。照射と消灯を5分ごとに繰り返し、装置から25~35メートルの範囲まで効果がある。柱や壁などに装置を設置し、場所に合わせて0~355度の範囲で角度を調整できる。レーザー光は三角、四角、丸などと自動で形を変えながら、拡大と縮小を繰り返す。 22年に島根県内の農場で行った実証試験では、牛舎内にカメラを設置してカラスが牛舎内に入り込んでいるかどうかを調べた。昼間のカラスの往来が、設置前が約34%だったのに対し、設置中は約4%だった。 導入数は今年11月末時点で全国で1000台以上。同県浜田市で乳牛を中心に約1400頭飼養する浜田メイプル牧場は、22年9月に使い始め、現在は17台が稼働する。取締役の松永一成さん(26)は「効果の持続性は抜群」と話す。以前は花火などで追い払っていたが、カラスはすぐに慣れてしまったという。装置の導入で、カラスに突かれたストレスで牛が乳房炎になり搾乳できないといった被害も、ほぼゼロになった。 装置の耐久性は3~5年で、全国の代理店を通じ平均25万円前後で販売する。電気の配線工事が必要な場合もある。レーザー光は牛やヒトの目に負担が小さい強さに調整されているが、周辺民家、公道、上空に向けないことを注意点に挙げる。
日本農業新聞