【制作現場レポート】白石和彌の“魂の叫び”を山田孝之が体現、11年ぶりタッグ作「十一人の賊軍」撮影に密着
山田孝之と仲野太賀がダブル主演を務めた映画「十一人の賊軍」の撮影に、映画ナタリーが密着した。 【写真】談笑する白石和彌と出演者 「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる脚本家・笠原和夫が1964年に執筆した幻のプロットを、「孤狼の血」「極悪女王」の白石和彌が映像化した本作。旧幕府軍と新政府軍=官軍が対立した戊辰戦争の最中、新発田藩で起きた歴史的事件をベースに描く。 2023年9月20日、千葉・鋸南町の採石場に建てられたオープンセットで撮影されたのは、新発田藩の砦を守る任についた決死隊の集う小屋が、官軍に襲撃されるシーン。主人公・政役の山田、鷲尾兵士郎役の仲野に加え、尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力が演じる決死隊のメンバー、そして隊長・入江数馬役の野村周平、新発田藩士役の田中俊介といったそうそうたる面々が集結した。 現場には常に砂埃が舞い、体調面を考慮しながら炎天下の中で撮影が進む。白石は小屋が砲撃を受け、人が吹き飛ばされるタイミングや煙が上がる演出効果、その一連の流れと迫力をモニタで何度も確認。屋内のセットの視界が悪化する中で白石は、「もう1回!」と納得のいくまでテストを重ねていた。別のシーンでは、政が仲間たちを守るために豪快な刀さばきで官軍の刺客と対峙。小屋で敵の様子をうかがう兵士郎を演じる仲野の表情からは、緊迫した空気感が伝わってきた。 笠原が手がけた「十一人の賊軍」のプロット・脚本はその結末が当時の東映撮影所所長から却下され、企画は打ち切りに。脚本は破り捨てられ、プロットだけが残されていたという。白石は「物語のラストについてはプロットから改変しています。時代が変わるときに、誰が生き残って未来を見ていくのか。この作品のヒロイックさ、物語の強さは笠原さんにしか思い付かなかったものがある。僕らはそれを信じて、今の時代へのメッセージを込めました」と語る。 「凶悪」以来約11年ぶりのタッグとなった山田について、白石は「変わらずスターの道を歩み続けている。僕もいろんな作品を撮ってきましたが、ここで初心に帰って映画作りをしたい思いがあった。山田さんはある種、自分を監督にしてくれた人。もう一度、彼とやることで純粋に映画作りができるんじゃないかと。僕の“魂の叫び”を、山田さんならきっと受け取ってくれる。そう思ってオファーしました。この10年ほどで山田さんもプロデューサーをされたり多角的に作品を見れるようになっていたので、より心強いなと感じています」と信頼関係をのぞかせる。 また、決死隊の中で唯一の女性である女郎・なつを演じた鞘師のキャスティングの意図を問うと、白石は「もともと鞘師さんには興味があった。彼女のピュアな部分、立ち姿の美しさ、そして本気度。モーニング娘。として活動されていた頃から彼女のよさに注目していました。この汚い賊の中にいても違和感がないので、いい人にめぐり会えたなと感じています」と明かした。 「十一人の賊軍」は、11月1日より全国でロードショー。Dolby Cinemaでも上映される。 (c)2024「⼗⼀⼈の賊軍」製作委員会