米倉涼子×中園ミホ対談「泥臭い闘いも努力も、かっこ悪いことじゃない」ドクターXが教えてくれたこと
複雑なものを抱えながらも魅力的な女性になった未知子。その背景には何があったのか
『ドクターX』シリーズ12年の集大成となる『劇場版ドクターX』。主演の米倉涼子さんと脚本家の中園ミホさんがシリーズを振り返るスペシャル対談の後編。力強いメッセージは、働く女性必読です。 【写真10枚】「何か成し遂げたいなら、努力で乗り越えるしかない。米倉涼子と大門未知子が教えてくれました」 〈※全2回の後編/前編は記事下のリンクからご覧いただけます〉 --------- ──対談の前編では、脚本家・中園ミホさんが当初想定していた「クールな手術ロボット」だった「ドクターX」こと大門未知子が、米倉涼子さんによって人間味と愛情あふれる人物になったという背景が明かされました。 この「人間らしさ」のさらなる源が明かされるのが、シリーズファイナルとなる『劇場版ドクターX』。ここでは、「ドクターXがどうやって誕生したか」のエピソードゼロが展開されます。シリーズファンにとっては、当時からこの構想があったのかどうか、気になるところですが…。 中園:「最初から考えていた」と言えたらかっこいいけれど、実はまったく想定していなくて。未知子のあんなところが見たい、こんなところが見たい、という思いで書き続けてきただけで、まさかこんなに続くと思っていませんでしたから。そこに米倉さんが人間味を加え、どんどん未知子が変わっていき、その結果、このようなファイナルになりました。 米倉:第1シリーズで終わる予定でしたからね。でも、連続ドラマ中に役者たちから、未知子のバックボーンはどうなってるのか聞かれたら、どうしてたんですか(笑)。 中園:考えてなかったわ(笑)。それに私、終わったことは忘れてしまうので。続きを書きながら、「あのとき、どうだったっけ?」ってさかのぼって調べたりして。 米倉:(笑)。 中園:ファイナルとなる『劇場版ドクターX』で未知子の生い立ちを描いたのは、私自身が彼女のエピソードゼロを見たいと思ったから。どうやってここまでになったんだろう。何があって強くなったんだろう。子供の時どんな子だったか、研修生のときはどうだったか。複雑なものを抱えながらも魅力的なひとりの女性になった背景には、どんなことがあったのか。 ◆感情が高まって、終始涙をこらえるのに必死でした 中園:そしてやっぱり、未知子と晶さん(岸部一徳/未知子が所属する名医紹介所の所長)との関係は、最後にきちんと描きたいということも思っていました。最初のころは、マネージャーとしてちょっと胡散くさい感じだったけれど、未知子にとってはかけがえのない存在なんですよね。 物語の中だけでなく、実際にふたりはすごく仲がいいでしょ。友達のようでもあり親子もようでもあり。打ち上げでもいつも一緒にいて。それを見て、私も刺激されたのだと思います。 米倉:未知子にとって晶さんはお座布団のような存在。お座布団を枕にして、うとうとしながら癒されるような、仕事を越えた人としての深いつながりがあるんです。ただ、クールな未知子が映画で人間くさくなりすぎてもいけないんじゃないか、ということは考えました。 つい感情が入りすぎて、それを抑えなきゃ、強い大門未知子にならなきゃって、ずっと自分に言い聞かせながら演じていた気がします。特にその時期、私自身の病気もあって、立っていることさえも大変なこともあったり、だからこそ病気になる側の立場も痛いほどわかったり。感情が高まって、終始涙をこらえるのに必死でした。それを隠して大門未知子になるのは、すごくつらかったかな。 ◆努力と継続なしに夢はつかめない ──未知子と患者、未知子と晶さん、それぞれのつながりだけでなく、『劇場版ドクターX』のメッセージは、未知子と同じ働く女性に向けてのエールとして受け取ることもできます。おふたりはこのメッセージをどのように捉えているのでしょうか。 米倉:努力とか継続とか、そういう泥くさいことは、今どき古いと思われるのかもしれないけれど、何かをやり遂げるためには、やっぱり欠かせないこと。ごく一部の超天才やロボットでもないかぎり、必死の努力なしに夢はつかめないんだろうと思います。大門未知子がそうだったように。 中園:こんなふうに、米倉さん自身がとても泥くさいでしょう。私だったら、これだけの美貌があったら、努力も何もしないんじゃないかと思うもの(笑)。私、怠け者なので。でも、何か成し遂げたい、何者かになりたいと思うのなら、そこには高い壁が立ちはだかるし、近道はなくて。自分の努力で乗り越えていくしかないんだと、米倉涼子と大門未知子が教えてくれました。 米倉:中園先生も、12年の間、忙しい時期を乗り越えてきましたもんね。 中園:いくつも仕事が重なってしまったときは、脚本家仲間でもある林 誠人(はやし・まこと)さんが私に代わって脚本を書いてくれました。すると、同じ『ドクターX』でも、少し違うタッチが入ってきて、またそれがよかったんですよね。女性が妬まれたり、男性同士のいざこざがあったりしたのは、林さんならではでした。 米倉:私だけじゃない。中園先生だって、努力と苦労を重ねてきて…。 中園:いや、私の場合はお酒を飲みすぎちゃうのでダメです。 米倉・中園:(笑) ---------------- インタビュー前編は、WEB Domani本文でご覧いただけます。 下のリンクからぜひチェックを!