『PS5 Pro』限定モデルの転売対策は十分なのか 称賛の一方で“条件の緩さ”に懸念も
9月30日、『PlayStation 5 Pro 30周年アニバーサリー リミテッドエディション 特別セット』(以下、 『PS5 Pro リミテッドエディション』)の予約受付が、ソニーグループの公式直販サイトであるソニーストアでスタートした。 【画像】“初代プレステ”の思い出が蘇る…30周年限定モデルのPS5 Pro 応募/購入条件に転売対策と見られる要項が盛り込まれたことでも注目を集めた同パッケージの予約受付。はたしてソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)の取り組みは功を奏すのか。対応の是非を考えていく。 ■限定12,300台。シリアルナンバー入りのプレミアムなPlayStation 5 Pro 『PS5 Pro リミテッドエディション』は、初代PlayStationの誕生から30周年を記念して発売される、特別なPlayStation 5 Proパッケージだ。限定仕様の本体やDualSense、DualSense Edge、コントローラー充電スタンド、ディスクドライブ用本体カバー、縦置きスタンドなどが同梱され、1台ごとにシリアルナンバーが刻印される。発売日は2024年11月21日で、価格は16万8,980円(税込)。PlayStationの発売日にちなみ、全世界で12,300台しか発売されない数量限定のセットである。 『PS5 Pro リミテッドエディション』の存在が明かされたのは、9月20日のこと。「PlayStation」シリーズの開発/発売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、同プラットフォームの公式ブログ・PlayStation Blogにおいて、「PlayStation 30周年アニバーサリー コレクション」を発売すると発表した。ここには、上述のPlayStation 5 Proのパッケージ以外にも、PlayStation 5 デジタル・エディションを対象にしたパッケージや、DualSense/DualSense Edge ワイヤレスコントローラー単品、PlayStation Portal リモートプレーヤー単品が含まれている。そのすべてが初代PlayStationを彷彿とさせるアイコニックなデザインから話題を集めた。 なお、『PS5 Pro リミテッドエディション』以外の商品は、さまざまなPlayStation取扱店およびECサイトで予約を受け付けているが、限定販売となる同パッケージは、ソニーストアのみでしか予約を行えない。受付期間は、2024年9月30日10時から2024年10月14日23時59分まで。応募数が販売予定台数を超えた場合は、抽選となる。結果は、2024年11月7日ごろより順次案内される予定となっている。 ■盛り込まれた応募/購入条件。はたしてSIEの転売対策は功を奏すか 今回の『PS5 Pro リミテッドエディション』の予約には、いくつかの応募/購入条件が設定されている。なかでも、とりわけ目を引いたのが、PlayStation Networkの利用に関する記述だ。PlayStationプラットフォーム・ポータルサイト内にある予約応募受付ページには、「日本で登録されたソニーアカウントでPlayStation Networkを利用していること」「応募したソニーアカウントで(PlayStation Networkに)サインインした状態で、2014年2月22日から2024年9月19日23時59分までの期間に、PlayStation 4とPlayStation 5いずれか、または双方の起動時間が合計で30時間以上あること」と記載されている。つまり、海外から登録されたアカウント、利用実態のないアカウントでは、応募/購入ができないというわけだ。同パッケージは2024年9月20日に発表されているため、(このような条件が設定されることを見越し)後出しでアカウントを準備することも不可能となっている。公式による転売対策と見られる一連の対応に、界隈からは称賛の声も上がっている。 発表時からプレミアムアイテムとなることが半ば約束されていた『PS5 Pro リミテッドエディション』。日本に先立ち、9月26日から予約受付がスタートしたアメリカでは、さっそく転売商品がマーケットを賑わしている。大手ECサイトのeBayでは、700万円超という高額で出品されている商品もある。予約開始直後にくらべると、価格はやや落ち着きつつあるが、それでもまだ多くの商品が100万円弱というプレミア価格で取引されている現状だ。こうした実態を見るに、おそらくアメリカでは、先着順で予約を受け付けたのだろう。世界共通で高い需要を誇るであろう同パッケージであるだけに、日本国内でも当選が確定する今後、同様の状況に見舞われることが想定される。 そもそも日本国内におけるSIEの対応は、転売の防止/抑止に十分と言える内容だったのだろうか。まだ記憶に新しいPlayStation 5の品薄騒動は、アメリカや欧州などに比較して相対的に安かった日本での価格に、海外の転売屋が群がった結果だと言われている。その意味において、「日本で登録されたソニーアカウントに限定したこと」「PlayStation Networkの利用を条件としたこと」には一定の効果が見込めるだろう。 しかしながら、そこに設けられた「約10年で30時間の起動実態」というハードルは、あまりにも低いと言える。なかには、こうした事態を想定して準備していた転売屋もいるかもしれない。あらゆる業界をまたいで話題となっている転売だけに、10年前はモラルや(PlayStationプラットフォームへの)ロイヤリティを持ち合わせていたものの、現在はそうでない層だって少なからずいるはずだ。彼らにとって、「1日と6時間の起動実態」は難なく飛び越えられるハードルであるだろう。そのことはおそらく、抽選結果が発表された直後のマーケットが証明してくれるに違いない。 根絶をめぐり、いたちごっこが続く転売問題。しかし、これほど市民権を得てしまったからには、ゼロにすることは難しいと言える。はたしてSIEの対応は良い結果をもたらすか。また、もし期待した成果が得られなかったならば、“次なる矢”はどのようなものとなるのか。ゲーム業界では近い将来、Nintendo Switchの後継機の発売も控えている。“草刈り場”となりやすい業界であるだけに、組織を横断してノウハウを蓄積し、抜本的な対策へとつなげてほしい。
結木千尋