米利下げの完全織り込み9月に後ずれ-10年債利回りは4.5%再び視野
(ブルームバーグ): 予想を大きく上回る3月の米雇用統計を受けて、5日の米国債市場では売りが膨らんでいる。早期の利下げ期待が消え、10年債利回りは約4.40%に上昇した。
3月の米雇用者数は30万3000人増、1年ぶりの大幅増-失業率低下 (1)
雇用統計では米金融当局に利下げを促すようなストレスがほとんど見られなかった。その結果、9月より前の利下げを完全に織り込む動きは消えた。スワップ市場では目下、6月の利下げ予想確率が約52%で、7月も100%を割り込んだ。今年の利下げ幅予想は合計約67ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)にとどまり、米金融当局が示唆している75bpを下回っている。
アカデミー・セキュリティーズのマクロ戦略責任者、ピーター・チール氏は「このデータが米金融当局の早期利下げを促す原動力にならないのは明らかだ」と指摘。「国債利回りは上昇を続けるだろう。力強い指標と原油価格の上昇により、10年債利回りは4.5-4.6%に到達する方向に向かうだろう」と述べた。
ただ、雇用統計では労働参加率が上昇し、国債価格の下値を支えた。労働参加率は62.5%から62.7%に上昇し、コンセンサス予想の62.6%を上回った。これはの賃金上昇を抑制する可能性があることを示している。
米連邦準備制度理事会(FRB)の元理事で、現在はシカゴ大学ブース・スクールの教授を務めるランドール・クロズナー氏はブルームバーグテレビジョンで「今回の統計で重要なのは労働参加率だ」と指摘。「これは良いニュース」とし、「雇用者数の大幅な上振れにもかかわらず、債券市場の反応がやや控えめなのはそのためだ」と語った。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の米金利チーフストラテジスト、アイラ・ジャージー氏は「米金融当局がデータ次第の姿勢を本当に貫くなら、利下げを主張するのは難しいだろう」と指摘。「10年債利回りの次の重要なテクニカル水準は4.5%とみている」と述べた。