「創業者の理念」、時代が変わってもリスペクトして守るべき? 事業承継後、自分のカラーで経営したい次世代はどうする
先代、先々代から受け継がれてきた会社の理念が、時代に合わなくなったり、形骸化したりしていないだろうか?創業の理念は変えられないが、自分のカラーを打ち出したい後継者もいるはずだ。事業承継の際、会社の理念をどう受け継いでいけばいいのか?会社の理念とも言える「パーパス」の重要性を説く経営コンサルタント「やまぐち総研」(山口市)の中村伸一所長に聞いた。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆仏つくって魂入れず?
――会社の理念「パーパス」を作ることは、なぜ大切なのでしょうか。 新型コロナウイルス禍で、将来の予測が立たないVUCA(ブーカ)時代になったといわれます。 数字的な見通しを立てにくいからこそ、経営の軸として、パーパスの重要性が高まっています。 VUCAの時代に対応し、社員が一丸となって事業再構築や事業承継を進めていくためには、理念・パーパスが必要だと思います。 ただ、現状では、自分の会社の経営理念を知らない社員が多いです。 企業向けの社員研修や営業研修をした際、大手企業であっても自社の経営理念をちゃんと言える社員が意外と少ない。 そこで、私が経営者に新たなパーパスの導入を提案すると、すぐに「いいね。じゃあパーパスをつくるか!」となるんですね。 ところが、ただ作って掲げるだけで、パーパスを社員やステークホルダーに浸透させる取り組みをせずに終わってしまうことがあります。 パーパスは実践するほうが大事なのに、活用できていない企業も目立ちます。
◆事業承継こそ、パーパス作成のベストタイミング
―効果的に理念を浸透させるには、どうすればいいでしょうか。 後継者に事業承継するときこそ、従来の経営理念を今一度見つめ直す絶好のタイミングです。 改めて経営理念を理解して、社員に浸透させるきっかけになると思います。 子どもへの事業承継だけでなく、場合によっては第三者承継やM&Aという選択肢もあるでしょう。 会社を次の世代に引き継ぐときこそ、理念を見直すべきだと思います。
◆創業者の理念、次世代はどうするべきか
――会社の理念は、時代に合わせて中身を変えるべきですか? 変えてはいけないものと変えていいものがあると思います。 創業者の理念は変えるべきではありません。 リスペクトすべきです。 「易不易」や「不易流行」という熟語があるように、本質的なものを大切しながら、流行に合わせていくべきだと思います。 ――中村さんが使っている「温故承新」という言葉につながりますね。 「温故承新」という言葉は、私がひらめいた言葉です。 地方では中小企業の後継者不足が大きな社会問題になっていることから、2021年に山口県の若い弁護士や税理士ら士業の人たちと「やまぐち事業承継・M&A協同組合」を立ち上げました。 自分たちのメッセージを伝える言葉をつくりたいと思案していたら、ふとひらめいたのが「温故承新」です。 「(故)ふるきを(温)たずね(新)あたらしく(承)うけつぐ」という意味です。 これを組合の理念として掲げました。