視聴者本気でブチ切れ…名演技がハマり過ぎて大炎上の”悪役”俳優(5)女の子をいじめるな…圧巻のリアルな芝居
ドラマや映画を見ていると「悪役」がハマりすぎて、嫌な気持ちになることがある。演じた俳優にとっては、たまったものではないが、見方を変えれば、演技に説得力があったということの証でもある。今回は「悪役」を見事に演じたことで視聴者からブーイングをくらった役者をセレクト。それぞれの演技の魅力に迫る。第5回。(文・shuya)
梅沢富美男『ファーストペンギン』(2022)
近年、バラエティ番組に引っ張りだこの梅沢富美男は、歌舞伎をルーツとする演劇のサブジャンルである「大衆演劇」のスターであり、西田敏行主演のドラマ『淋しいのはお前だけじゃない』(1982、TBS系)を皮切りに、映像作品でも存在感を発揮するベテラン俳優である。 近年の映像作品では、日本一の資産家を演じたドラマ『ゼロ 一獲千金ゲーム』(2018、日本テレビ系)や『ブラックペアン シーズン2』(2024、TBS系)の第3話で演じた会社経営者の役もハマっていた梅沢だが、世間に与えた反響の大きさという点で、ドラマ『ファーストペンギン』(2022、日本テレビ系)が群を抜いている。 奈緒演じるシングルマザーが漁師の世界に飛び込ぶ姿をエネルギッシュに描いた本作で梅沢が演じたのは、超強面の漁協の組合長・杉浦久光。利益のために権力を振りかざす、ドラマを盛り上げるためには欠かせないザ・悪役である。上述した2作品にも共通するが、金満家、あるいは権力者の役を演じさせたら梅沢の右に出る者はいない。 奈緒が演じた主人公・岩崎和佳の好感度が高かっただけに、視聴者のフラストレーションの矛先が、彼女を妨害する杉浦と演じ手である梅沢本人に向かうのは不可避だった。放送当時、Instagramのダイレクトメッセージで「お前は自分の利益しか考えないのか!」「女の子をいじめるな!」といった、虚実を混同したクレームを受けたと、梅沢は明らかにしている。 いかにも理不尽なクレームだが、それに対して怒りを表明するのではなく、自身の芝居に対する賛辞として受け取るところに、梅沢の懐の広さと役者としての矜持がある。 今後も、憎たらしいキャラクターに扮して、観る者をヤキモキさせてほしい。 (文・shuya)
shuya